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反ワクチン運動の真実 ~死に至る選択~を読んでみました。

 
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1974年生まれ。2000年三重大学医学部卒業。三重県松阪市で内科クリニックを10年前からしています。診療所に併設して有料老人ホーム、認知症対応型グループホームもあり、自宅生活の方も含め在宅医療も行っています。 また、インスタグラムでフォロワー1万人超のアカウントを2つ運営するインスタグラマーでもあります。 地域のかかりつけ医として気軽になんでも相談してください。医療と介護の両面から一緒に考えます。
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久しぶりに読書記事です。

今回はポール・オフィットが執筆の「反ワクチン運動の真実 ~死に至る選択~」です。

ポール・オフィットはアメリカのウイルス学などを専門とする小児科医でロタワクチンの共同開発者の一人です。

 

1970年代のDPTワクチン

最初は1970年代のDPT(3種混合)ワクチンによるアメリカ社会でのパニックと医療訴訟の多発について書かれています。

DTPの接種後にたまたま(ワクチンとは関係なく)生じた死亡や脳障害をワクチンの副作用と思い込み、社会運動にまで発展し、挙句の果てに小児科医が百日咳ワクチンの接種を控えたことによる百日咳での死亡者数の増加についてでした。

当時はワクチンのエビデンスもワクチンによる法的救済制度も不十分なため、大きな社会問題となり、医療訴訟の多発による多額の賠償金支払いという結果になりました。

 

2000年前後のMMRワクチン

DTPパニックから20年経った1998年にはMMRワクチンによる自閉症が生じたということで再び世間を騒がせました。

(MMRは麻疹、おたふくかぜ、風疹です)

MMRワクチンと自閉症には何の関連もありませんが、MMRワクチンを接種する年齢と自閉症が判明する年齢が近いため関連が疑われました。

この頃には医学もエビデンスが集積され、因果関係を否定することができるようになっています。

 

19世紀の反種痘運動

時代は遡り18世紀のイギリスでジェンナーにより発見された牛痘接種は天然痘による死者を半減させました。

そして牛痘接種はイギリスで法定予防接種となり、ワクチンを子供に打たせない親への罰金などが生じるようになりました。

そして法定予防接種としたことで世界初の反ワクチン運動が発生することになります。

牛痘を接種すると牛みたいになるといった流説が広がり、反種痘運動となります。

その結果反牛痘接種は社会運動として成功し、ワクチンを接種しない自由を手に入れたロンドンで天然痘が大流行し、多数の人が死亡することになります。

 

集団免疫の効果と崩壊

現代でもワクチンを拒否される親はまれにいますが、ワクチンを打たなくても病気に罹らないことが多いのは集団免疫により病気が抑えられているからです。

ワクチンを打たない子供が増えると集団免疫は崩壊します。

また、ワクチンによる副作用を恐れ、病気に罹ることで自然免疫を獲得したらよいと考える人もいます。

しかし、自然免疫に任せる時の死亡者数とワクチン接種を行った時の死亡者数は明らかに後者が少ないです。

 

インフルエンザワクチン今昔

昔はインフルエンザワクチンは学校で強制的に接種していました。

そのおかげで今ほどインフルエンザの流行による学級閉鎖も多くありませんでした。

何より、子供たちがインフルエンザに罹らなくなることでインフルエンザを家庭へと持ち込まず、その結果として高齢者のインフルエンザへの罹患率・死亡率も抑えられていました

現在はインフルエンザワクチンは任意接種となったため、学級閉鎖・学校閉鎖が増えています。

 

子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)

そして現在の日本における子宮頸がんを予防するためのHPVワクチンへの反対運動についても述べられています。

HPVワクチン反対派はワクチンが慢性的な痛みや慢性疲労症候群、起立性頻脈症候群といった体調不良を引き起こすと言って主張します。

またメディアもワクチン接種と体調不良の関係が因果でなく偶然である可能性には触れていません。

HPVワクチンは認可されるまでに何万人も人で調査研究が行われています。

もちろん調査研究ではそのような病気の出現はありませんでした。

思春期に起こりがちな慢性的な痛みや慢性疲労症候群、起立性頻脈症候群がたまたまHPVワクチン接種後に起こったことで因果関係を疑われ、社会運動へと発展し2013年より厚生労働省が積極的な定期接種勧奨を差し控えてしまいました。

HPVワクチン発売当時はCMもたくさん流れ、ワクチンメーカーも積極的に売り込みをしましたが、最近は全くありません。

もちろんHPVワクチンを打ちに来る人もいません。

HPVワクチン自体は現在も接種可能です。医療機関に問い合わせて取り寄せれば接種できます。

HPVワクチンは子宮頸がんを予防できる唯一のワクチンです。

ワクチンによりがんの85%を予防できます。

毎年子宮頸がんに約1万人の女性がかかり、約3000人が死亡します

しかし、予防接種の推奨差し控えたことで何千人もの少女が将来子宮頸がんに罹患し死亡することが明らかです

時代は変われど反ワクチン運動は必ず出現し、その結果として死ななくてもよい病気で死んでしまう人達がいます。

 

ワクチンを打たない選択と周囲への影響

ワクチンを打つ打たないは個人の自由という人もいるかと思いますが、打たないことによる集団免疫の崩壊がその他の人々を危険に晒します

特に免疫力の低下した病気を持っている人にとっては集団免疫の崩壊は非常に危険です。

ワクチンを打たない選択をするなら集団生活をしないで欲しいと思うのは言い過ぎでしょうか。

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