治る(可能性がある)認知症を知ってますか?慢性硬膜下血腫について
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こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、
西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
「認知症」と聞くと治らない病気とのイメージが強いです。
事実、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症など多くは治りません。
しかし、認知症の中には治る(可能性がある)認知症もあります。
今回からは治る(可能性がある)認知症について解説します。
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治る(可能性がある)認知症とは
治る認知症とは脳自体が異常を来したのではなく、何らかの原因で脳や全身の状態が一時的に低下して認知症を生じたものです。
認知症の定義認知症とは、脳の病気により認知機能(記憶力・判断力・見当識・計算力など)が低下し、今までできていた仕事や家事が難しくなってきた状態(生活障害)をいいます。
治る認知症の原因として多いのは
- 慢性硬膜下血腫
- 正常圧水頭症
- 薬物性認知症
- 甲状腺機能低下
この4つです。
では各疾患について簡単ですが4回に分けて解説していきます。
今回は慢性硬膜下血腫についてです。
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慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)とは
慢性硬膜下血腫は、脳を覆っている硬い膜(硬膜)と大脳の間に血液が溜まってしまう病気です。
よくあるのが転倒などで頭を打った後、2~3か月後に起こります。
慢性硬膜下血腫の症状
血腫によって脳が圧迫されて物忘れや歩行障害、トイレの失敗(尿失禁)など、認知症とよく似た症状が現れるのが特徴です。
慢性硬膜下血腫の症状多くはなんとなくぼんやりしている、眠りがちとなった、活動力が低下したことなどの症状で始まります。
次第に頭痛(38.2%)・嘔吐(3%)などの症状や、歩行障害(63%)、片麻痺(58.6%)、言語障害(1.8%)をきたします。
尿失禁(17.4%)を生じてくることもあります。
時に記銘・記憶障害を呈して痴呆様症状(24.6%)が前面にでてくることもあります。
さらに進行すると、意識障害(17.4%)、痙攣(2.4%)、瞳孔不同(2.0%)を呈することもあります。
認知症の症状がある80~90歳代にも慢性硬膜下血腫が多く見られます。
高齢だから認知症とすぐに決めつけず、転倒などで頭をぶつけたことがあれば、脳神経外科で診察を受けてみましょう。
慢性硬膜下血腫の治療
脳に溜まった血腫を除去すれば脳は正常な状態に戻ります。
基本的には手術をして血腫を取り除きます。
脳の表面に溜まった血液は、硬く固まった血液ではなく、どろどろしたゼリー状の血液です。
このため全身麻酔をかけて大きく頭を開けるのではなく、局所麻酔で頭蓋骨に開けた小さな孔から治療を行います。
管を血液の溜まっている脳の表面に滑り込ませ、血液を洗い流して、そのまま管を脳の表面に残して手術を終わります。
管から残った血液を暫くのあいだ流す処置が、病棟で行われます。
手術が何らかの理由で行えない場合や、血腫の程度が小さく脳への圧排が少ない場合は薬による治療法が選ばれる場合もあります。
ただし、この場合は血腫が無くなっても元々の認知症が治るわけではありません。
五苓散(ごれいさん)と呼ばれる漢方薬が、この慢性硬膜下血腫に効くことがあります。
五苓散は手術後、残った血液の退きが悪い場合にも使われます。
余談ですが…
慢性硬膜下血腫は非常にポピュラーなので医師同士では『まんこう』と略して喋ったりします。
例えば、天井に固定されている医療器具にうっかり頭をぶつけると
「まんこうになるよ(笑)」と言われたりします。
外部の人が聞くと何言ってるのという感じに聞こえますね。
次回は正常圧水頭症についてです。
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