【医師が解説】湿布による皮膚トラブルの原因・予防について
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こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、
西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
湿布はドラッグストア等でも気軽に購入できるので、特に医薬品ということも気にせず使う方が多いと思います。
しかし、医薬品ですので皮膚トラブルが起こることもあります。
今回はその原因と予防法について解説です。
湿布による皮膚トラブル
湿布による皮膚トラブルは医学的には「接触性皮膚炎(せっしょくせいひふえん)」といいます。
湿布による皮膚トラブルはアレルギー性のものが多いと思いがちですが、実は違います。
皮膚トラブルの原因①:物理的刺激
皮膚トラブルの原因の1つは「物理的刺激」です。
どちらかというと湿布による皮膚トラブルは「物理的刺激」によるものがほとんどです。
更に物理的刺激もいくつかに分かれます。
皮膚の表面に強い力が連続してかかることで生じる「緊張性水疱(きんちょうせいすいほう)」
- 湿布を強く引っ張って貼った時に湿布が元に戻ろうとする力が働く。
- 肘や膝などを曲げる度に湿布が引っ張られる。
といったことで生じます。
皮膚が白くふやけた状態になる「浸軟(しんなん)」
湿布を長く貼り続けることで発汗や不感蒸泄が妨げられ、蒸れて生じます。
浸軟した皮膚は、皮膚のバリア機能が弱まり刺激物質が侵入しやすくなったり、皮膚表面のpHが高くなるため細菌が増殖しやすくなります。
勢いよく剥がすと生じる「角質・表皮剥離」
湿布を強い力で一気に剥がしたり、持ち上げるように剥がすと、疼痛やかゆみ、湿疹などの原因となる「角質・表皮剥離(かくしつ・ひょうひはくり)」が生じます。
そして細菌やウイルス、真菌などの感染リスクが高まります。
皮膚トラブルの原因②:化学的刺激
刺激性接触性皮膚炎
湿布の原料に含まれる化学物質や湿布を貼る前に皮膚に付着していた物質が皮膚に浸透することで生じます。
かゆみや紅斑(こうはん)、水疱(すいほう)、疼痛などの症状があります。
アレルギー性接触性皮膚炎
湿布の原材料に含まれる化学物質にアレルギー反応を起こして生じます。
湿布による皮膚トラブルの予防法
貼り方・剥がし方のポイント
貼る時
- 湿布を貼る時に引っ張り過ぎないようにする。
- 肘や膝に使用する場合は、屈曲部を半分曲げた状態で貼るか、湿布に切り込みを入れる。
- 同じ部位に連続して貼る場合は、時間を空けて皮膚を休ませる。
- 同じ部位に連続して貼る場合は、位置を少しずらす。
- 湿布は、清潔で乾いた状態の皮膚に貼り付ける。汚れや湿布の粘着剤が残っている場合は、きれいに拭きとる。
- 貼る部位に傷口や、湿疹や発疹がある時は使用しない。
剥がす時
- 皮膚と湿布の剥がす角度が大きく、剥がす速さが遅いほど、皮膚にかかる負担が軽減する。
- ゆっくりと、周囲の皮膚を片手で押さえながら、皮膚に沿って剥がしていく。
- 剥がす前に水やぬるま湯で湿らせるか、濡れタオル押さえておくとより剥がしやすい。
テープを貼るとき
シワが入らないように、伸ばさずにはります。皮膚やチューブに指の腹で優しく圧着します。
あらかじめテープを適切な長さにカットし、中央部からテープを引っ張らずに貼ります。
臨床上必要な場合以外はテープを引っ張らずに貼ってください。
同じ部位に繰り返し貼り剥がしする場合は、テープの下地としてあらかじめ皮膚剤を塗布しておきます。
テープを剥がすとき
テープを約180°に折り返します。
皮膚が持ち上がらないように手で押さえながら、ゆっくりと剥がします。
より優しく剥がすためには、剥離剤を皮膚と粘着剤の隙間に染み込ませるように使用して、テープを折り返しながら剥がします。
スキンケアの重要性
皮膚が乾燥するとバリア機能が低下します。
このような状態で湿布を使用するとあ、皮膚は刺激を受けやすく、痛みや痒み、湿疹、表皮剥離(ひょうひはくり)といった様々なトラブルにつながるおそれがあります。
皮膚トラブルを防ぎ、湿布をより効果的に使用するには日頃からスキンケアを行って保湿を高め、皮膚のバリア機能を保つことが大切です。
保湿剤としては、尿素製剤やヘパリン含有製剤が予防的使用としてはお勧めです。
特に冬場は、保湿が重要であり、また部屋の湿度のコントロールも必要です。
もし皮膚トラブルを起こしたら
まずは湿布の利用を中止します。
中止しても良くならなければ皮膚科医に相談しましょう。
自己判断による治療は悪化させることもあります。
自宅にある塗り薬を適当に塗るのは止めてください。
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