水分摂取を薦めてはいけない病気
スポンサーリンク
こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、
西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
6月に入り日々暑くなってきました。
高齢者が入居している施設に行くと「脱水予防に水分を摂りましょう」といったポスターなどをよく目にします。
脱水予防に水分摂取は正しいのですが、持病によっては水分摂取量を間違えると致命傷となることもあります。
水分制限が必要な病気
1.心不全
心臓は全身に血液を送り出すポンプとして一日中動いています。
心不全になると心臓から十分な血液を送り出せなくなり、体に必要な酸素が足りなくなり、坂道や階段で息切れがしたり、疲れやすくなります。
心不全の原因としては高血圧、弁膜症、心房細動、心筋症、心筋梗塞などいろいろな心臓の病気で(時に複合して)生じてきます。
全身へ送る血液が少なくなると腎臓への血液量も減ります。
すると尿の量が減り、水分が体内に貯留してきます。
そして足の甲やすねのあたりのむくみや、体重が1週間で2~3キロ増加したりしてきます。
更に悪化すると「うっ血」といって肺や心臓に水が溜まり呼吸が苦しくなります。
横になると苦しくて眠れないため起座(きざ)呼吸となります。
治療としては(可能なら)原因疾患の治療と心不全そのものに対する薬物治療を行います。
数種類のお薬を患者さんの状態に応じて慎重に調整していきます。
そして塩分制限や水分制限を始めとした生活習慣の改善を指導します。
また心不全の患者さんは睡眠時無呼吸症候群を合併していることも多いです。
心不全の患者さんは余分な水分を取り除くため利尿薬が使われていることが多く、脱水も来しやすい状態ですが、心機能の予備力が低いため溢水(いっすい)も来しやすいです。
たまに「水分制限がかわいそう」と言われる患者さんの家族の方もいますが、心不全の人には水分は毒と考えてください。
2.慢性腎不全
腎臓も機能が落ちていわゆる「慢性腎不全」となると水分制限が必要です。
慢性腎不全で体内に尿毒素や余分な水分が蓄積し、尿毒症状が出ているものの、透析を受けなくてもよい状態を腎不全保存期といいます。
目安の数値は特にeGFR<30min/mlでは注意が必要でしょう。
最近の血液検査では腎機能の数値にGFRが表記されることが多いので参考にするとよいでしょう。
(※GFR:糸球体濾過量(しきゅうたいろかりょう)といい、腎機能を表す指標です。)
この時期になると腎性貧血となりエリスロポエチン製剤が必要な頃です。
この時期は、降圧薬による厳格な血圧管理、塩分・水分制限によって余分な水分の貯留を防ぐ、タンパク質・リン・カリウムの摂取制限とエネルギーの十分な摂取などの食事療法、症状に応じた薬剤の投与などを行います。
少しでも腎不全の進行を遅らせ、透析導入を遅くすることが目標となります。
いったん末期腎不全(透析期)になると余分な水分は透析で除去することになりますが、やはり水分制限が必要です。
過剰に水分を貯めた後に多量の水分を短時間で透析にて除水するのは身体に非常に負担がかかります。
スポンサーリンク