治る(可能性がある)認知症を知ってますか? 薬物性認知症について
スポンサーリンク
こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、
西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
これまで、治る(可能性がある)認知症として「慢性硬膜下血腫」と「正常圧水頭症」について解説してきました。
今回は薬物による認知症についてです。
スポンサーリンク
薬物性認知症を生じやすくするリスク要因
患者側の因子
加齢(代謝・排泄能の低下、吸収遅延、感受性の亢進、血液脳関門の脆弱化)
神経細胞が必要とする酸素や養分のみを通すようにできています。
しかしアルコールや麻薬などの一部の薬はここをすり抜けることができるので、脳に作用します。
慢性疾患
肝疾患や腎疾患などの慢性疾患は薬剤の代謝や排泄を低下させます。
既存の器質性脳疾患や認知症疾患
脳内の種々の神経伝達系が障害されているため、中枢神経系の副作用が出現しやすくなります。
薬剤側の因子
処方薬剤数、薬剤投与量
薬剤数が増えるにつれて認知障害のリスクが高まり、2~3剤で2.7倍、4~5剤では9.3倍、6剤以上では13.7倍になるとの報告もあります。
血液脳関門の透過性
薬には先述した血液脳関門の透過性が高いものがあります。
薬理作用(抗コリン作用、鎮静作用、神経毒性など)
抗コリン作用と言うのは、副交感神経に代表される、アセチルコリン作動性神経の働きを抑えるというもので、非常に多くの薬剤がこの作用を持っています。
その中には抗コリン作用そのものが、薬の効果であるものもありますし、副作用として抗コリン作用を持つものもあります。
スポンサーリンク
抗コリン作用のある薬が認知症を生じる理由
抗コリン作用のある薬は実は非常に良く使用されています。
アセチルコリン作動性神経により、胃や気管支、膀胱などの平滑筋は収縮します。
そこで抗コリン作用薬を胃けいれんを抑える目的で使用されたり、気管支拡張剤として、また過活動膀胱の治療薬として使用します。
パーキンソン症候群の補助的な治療薬として、使用されることもあります。
鼻水や痒みを止める抗ヒスタミン剤や、抗うつ剤や抗精神薬は、副作用としての抗コリン作用を持っています。
この抗コリン作用は基本的に末梢神経のものですが、脳への作用も皆無ではありません。
認知症では脳のアセチルコリン作動性神経の障害が、早期に起こると考えられています。
そのために、現在認知症の進行抑制目的で使用されている、ドネペジル(商品名アリセプトなど)は、脳内のアセチルコリンを増やす作用の薬です。
逆に抗コリン剤はアセチルコリン作動性神経を抑制する薬です。
これがそのまま脳に働けば、脳のアセチルコリン作動性神経の働きを弱め、認知症のような症状を出現させることは予想できます。
実際に高齢者に抗コリン剤を使用することにより、せん妄状態や、記憶障害や注意力の障害など、認知症様の症状が急性に見られることは、良く知られています。
通常こうした急性の症状は、薬剤の中止により回復する一時的なものと考えられています。
スポンサーリンク
薬物性認知症を避けるためにできること
高齢者における抗コリン作用のある薬を、継続的に使用することは、認知症のリスクになることは、理屈から言ってもほぼ間違いがありません。
特に古いタイプの抗ヒスタミン剤と鎮痙剤、そして3環系の抗うつ剤などの、3年以上の持続的な使用は、避けるのが望ましいです。
近年使用されている抗アレルギー剤や、過活動膀胱の治療薬は、神経への選択性が高く、脳への作用は少ないと想定されますが、そこでどの程度の違いがあるのかは、現状では不明です。
参考までに高齢者で使用を避けることが望ましい薬の一覧表をご紹介します。
具体的な薬の参考記事
スポンサーリンク