フレイルは早期発見・早期治療が大切
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こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
近年、高齢者の全身管理においてフレイルという概念が提唱されています。
フレイルとは
海外の老年医学の分野で使用されている「Frailty(フレイルティ)」に対する日本語訳です。
「Frailty」を日本語に訳すと「虚弱」や「老衰」、「脆弱」などになります。
日本老年医学会が高齢者において起こりやすい「Frailty」に対し、正しく介入すれば戻るという意味があることを強調したかったため、多くの議論の末、「フレイル」と共通した日本語訳にすることを2014年5月に提唱しました。
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フレイルの定義
フレイルは加齢とともに、心身の活力(筋力や認知機能など)が低下し、生活機能障害、要介護状態、そして死亡などの危険性が高まった状態です。
フレイルは健康と要介護状態の中間に位置する状態として定義されており、適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能です。
多くの人がフレイルを経て要介護状態となりますが、高齢者は特にフレイルを起こしやすいことが分かっています。
フレイルは早期発見・早期治療が大切
高齢者が増えている現代において、フレイルに早く気付き、正しく介入(治療や予防)することが重要です。
フレイルには身体的な虚弱だけでなく、認知機能の低下やうつといった精神心理的なフレイル、貧困や独居など社会的なフレイルの3つの要素も含まれます。
超高齢社会をむかえ、3つのフレイルの中で当面の最も大きな問題となるのが、身体的なフレイルです。
寝たきりの原因は、脳卒中などの脳血管疾患が最も多いですが、フレイルも原因であることが明らかになってきました。
寝たきりの原因について65歳以上を5歳刻みで調べていくと、後期高齢者 (75歳以上) では、『高齢による衰弱』が最多。次に『認知症』、『骨折・転倒』が増えます。
フレイルの評価基準
フレイルの統一された評価基準はありませんが、下記のFriedらの評価基準が一般的に用いられています。
- 体重減少:6か月間で2~3kg以上の(意図しない)体重減少
- 主観的疲労感:(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
- 日常生活活動量の減少
- 身体能力(歩行速度)の減弱
- 筋力(握力)の低下:利き手の測定で男性26kg未満、女性18kg未満
以上の5つの項目のうち、3項目以上該当した場合をフレイル、1~2項目該当した場合を前フレイル(プレフレイル)、該当項目が0の場合は健常となります。
中高年者では過栄養、肥満からなるメタボリックシンドロームが糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こし、死亡リスクを高くするため、生活習慣病の予防が大切となります。
しかし後期高齢者ではフレイルの原因となる身体機能や認知機能の低下に関連する低栄養への対策が重要となります。
診察をしているとプレフレイルの状態でもメタボリックシンドローム対策の生活習慣をしている方がおり、それが更にフレイルを進行させてしまっている方を見かけます。
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65歳を過ぎたらメタボ対策よりフレイル対策です
厚生労働省は、メタボ対策からフレイル対応への円滑な移行が必要としており、生活習慣病の予防よりも生活習慣病の重症化の予防とフレイルの進行の予防が重要視されてます。
健康長寿ネットの「介護予防のための生活機能チェック」で基本チェックリストを使って生活機能をチェックすることができます。
運動機能・栄養・口腔機能・生活機能、・閉じこもり・認知症・うつのこれらの機能や症状についてチェックできるので是非一度チェックしてみてください。
フレイル対策
フレイルの主な原因にサルコペニア※1と低栄養があげられます。
サルコペニア対策には骨格筋の形成・維持に必要なタンパク質を十分に摂取する必要があります。
(※1サルコペニアとは、加齢や疾患により、筋肉量が減少すること)
「指輪っかテスト」でサルコペニアを自己チェック
東京大学高齢社会総合研究機構は、高齢者の筋肉量を簡単にチェックできる目安を考案しました。
両手の親指と人さし指で輪を作り、ふくらはぎの一番太い部分を囲みます。
このとき隙間ができると、筋肉量が少なくなっている可能性が高いです。
レジスタンス運動※2も筋肉でのタンパク合成を促します。
(※2筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動)
筋肉をつくるためにタンパク質の合成を促すには十分なエネルギー摂取も必要です。
フレイル対策には筋肉の他に骨の維持も重要であり、カルシウムやビタミンDも積極に摂りたい栄養素です。
フレイル対策は、筋肉や骨をつくるための栄養素をできるだけ食事から摂取することと、レジスタンス運動を行って筋肉の合成や骨密度の維持を図ることが重要です。
社会参加もフレイル予防には大切
また家に閉じこもりがちとなると、生活面や精神面など他の側面までもが低下をきたし、フレイルが重症化していきます。
趣味やできることを見つけて地域のボランティアなどに社会参加することは、生きがい、やりがいを見出すとともに社会的な役割を再び取り戻して自信をつけることにもつながります。
いきいきと生活することで心身ともに元気になるでしょう。
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医師と共に行うフレイル予防
フレイル予防には、持病のコントロール、運動療法、栄養療法、感染症の予防などが挙げられます。
1.持病のコントロール
糖尿病や高血圧、腎臓病、心臓病、呼吸器疾患、整形外科的疾患などの慢性疾患がある場合には、まず持病のコントロールをすることが必要です。
フレイルの筋力低下には、この後に説明する運動療法が有効ですが、持病のコントロールがされていないと高齢の方は体を動かすという気持ちになれないこともあります。
また、持病の治療がうまくいっていないとフレイルを悪化させてしまう可能性もあります。
2.運動療法と栄養療法
高齢者に対し適切な運動療法を行うと、サルコペニア、筋力低下に対しては、高齢者であっても運動療法によって筋力が維持される、ということが一部研究で報告されています。
運動療法は個人に合ったものから始めることが大切です。
筋力が低下している状態で、いきなり立ち上がったり、無理に歩行しようとすると転倒や骨折を起こす危険があります。
また運動療法は栄養療法とセットで行う必要があります。
低栄養状態で運動を行っても筋肉がつかないどころか、低栄養状態を助長してしまいます。
筋肉をつけるために必要な良質なタンパク質を摂れるような食事指導をします。
3.感染症の予防
高齢者の場合は、免疫力が低下していることが多いためインフルエンザや肺炎にかかりやすく、インフルエンザや肺炎といった感染症をきっかけに、重症化して入院、そして寝たきりになってしまうこともあります。
日頃から適度な運動やバランスのよい食事などにより感染症に強い体作りをするだけでなく、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種しておくのもフレイルを予防する1つの方法といえます。
医師と持病について相談・加療しながらし、運動療法のメニューの組み立てや栄養療法についてアドバイスをしてもらうのが良いでしょう。
今回のブログは「健康長寿ネットホームページ」を参考に作成しています。
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