胃痛・食欲不振の原因「機能性ディスペプシア」を知ってますか?
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こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
今回は胃もたれや胃痛を訴えて、内視鏡やバリウム検査をしても異常が見つからない病気「機能性ディスペプシア」についてです。
機能性ディスペプシアとは
RomeⅣ基準による機能性ディスペプシアの定義では
上部内視鏡検査を含めた各種検査において症状の原因となる胃腸の病気を認めないにもかかわらず、
- つらいと感じる食後のもたれ感
- つらいと感じる早期飽満感
- つらいと感じる心窩部痛
- つらいと感じる心窩部灼熱痛
のうちの1つ以上の症状があり、これらが6ヶ月以上前に初発し、3か月以上持続するもの
院長「心窩部痛」とはみぞおちの辺りの痛みです。
機能性ディスペプシアの原因
機能性ディスペプシアの原因はいくつもの因子が組み合わさっています。
1. 胃・十二指腸運動が障害されている
胃の動きが悪く、胃の内容物をなかなか十二指腸へ送れない。
食事のときに胃が拡張して食べ物を貯留する能力(胃適応性弛緩と言います)が低下している。
といった状態です。
2. 胃・十二指腸の知覚過敏が生じている
知覚過敏とは少ない刺激で症状が出ることです。
機能性ディスペプシアでは正常な方より軽い胃の拡張刺激で症状が出現します。
3. 心理的要因がある場合
脳と腸管は相互に密接に関連しており、これを脳腸相関と呼びます。
ストレスにより胃や腸の運動や感覚に変化が起こることがあります。
4. その他
胃酸の分泌過多、ヘリコバクターピロリの感染、遺伝、サルモネラなどの感染性胃腸炎後、生活習慣の乱れ、胃の形状など様々な要因があります。
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機能性ディスペプシアの原因と種類
1. 食事と関係する症状のタイプ(食後愁訴症候群)
週3回以上下記の症状があるものです。
- つらいと感じる食後のもたれ感
- つらいと感じる食事早期の飽満感(すぐにお腹がいっぱいになって食べきれない)
2. 食事と無関係な症状のタイプ(心窩部痛症候群)
週1回以上下記の症状があるものです。
- つらいと感じる心窩部痛
- つらいと感じる心窩部灼熱感
3. 食後愁訴症候群と心窩部痛症候群が合併したもの
アメリカでの検討では130人の機能性ディスペプシア患者のうち86人(66%)が合併していたという報告もあります。
合併している患者さんは結構多いです。
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機能性ディスペプシアの治療薬
機能性ディスペプシアの保険適応はアコファイド(アコチアミド)
1日3回毎食前に服用するお薬です。
胃の動きをよくすることで、食べたときの胃上部の膨らみや消化したものの排出を促します。
但し、処方前に内視鏡検査または上部消化管レントゲン検査をしていることが必要です。
ただし処方前に検査を受けなくても1~2年前に定期健診や人間ドック、他施設で行った内視鏡検査や上部消化管造影検査を受けていれば処方できます。
胃酸分泌抑制薬(主にプロトンポンプ阻害薬)もよく使われます
心窩部痛症候群は逆流性食道炎と症状が似ているため、胃酸分泌抑制薬もよく処方されます。
食後愁訴症候群には慢性胃炎に適応のある薬が出されることもあります
特に慢性胃炎に適応を持つ消化管運動機能促進薬は色々な種類があります。
消化管に作用する薬で十分効かないとき
抗うつ薬や抗不安薬を使うこともあります。
ただし効果は十分といえないことが多いです。
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機能性ディスペプシアに有効な六君子湯
「六君子湯」という名前がついていますが、実は8つの生薬が含まれる六君子湯は機能性ディスペプシアに有効という研究報告はたくさんあります。
六君子湯は適応性弛緩だけでなく、胃の排出能を高める成分が含まれていて胃の運動機能全体に作用します。
つまり食事によって起こる一連の消化管運動機能のそれぞれに作用して、正常に機能するように調節してくれるお薬です。
機能性ディスペプシアのセルフケア
生活の中で心がけること
- 胃に負担をかけない生活習慣
- できるだけ決まった時間に食事をする
- 食事はよく噛んで、ゆっくり食べる
- 胃に負担のかかる食事を取り過ぎない
- 食後は休息する
- 睡眠は十分にとり、ストレスや疲れを溜めない
- 適度に運動をする
- アルコールの取り過ぎに注意
- 禁煙を心がける
まとめ
- 各種検査において症状の原因となる器質的疾患を認めないが、胃の症状が起こる「機能性ディスペプシア」という疾患があります。
- 食後愁訴症候群と心窩部痛症候群の2つに分けられます。
- 「アコファイド」が保険適応ですが、事前に検査が必要です。
- 「六君子湯」も有効性が高いです。
- 生活習慣の見直しも機能性ディスペプシアの治療には重要です。
- 胃がんなどの重大な病気が隠れていることもあるので、自己判断せず検査をしておきましょう。
動画で解説:機能性ディスペプシアについて
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