【医師が正しく解説】加熱式タバコは害は少なく受動喫煙も無い?
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こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、
西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
最近、加熱式タバコが徐々に普及してきました。
各メーカーで名前が違い、「アイコス」(PMJ)、「グロー」(BAT)、「プルーム」(JT)です。
従来のタバコと比べて有害性が低いように思われていますが実際はどうでしょうか?
加熱式タバコと電子タバコの違いは
加熱式タバコはタバコの葉を熱して、そこからニコチンをしみ出して吸わせるものです。
海外で出回っている電子タバコはニコチンの液体を直接気化させて吸うものです。
紙巻タバコとの違いは燃やすか、燃やさないかだけです。
加熱式タバコの有害性
加熱式タバコは従来の紙巻タバコと比べて有害性が低い。
また副流煙は蒸気なので周りに迷惑がかからないと思われがちです。
でも実は違います。
有害成分の量と有害性とは違います。
例えば有害成分が5%程度で十分に身体に悪影響を及ぼす物質であれば、有害成分がこれまでの1/10で10%になってもやはり身体に悪影響を及ぼします。
すると結局、病気の発生率や死亡率には差が出ない可能性があります。
これまでも、タールが10mgから1mgまで減らしたタバコが売られてきましたが、有害性(病気の発生率や死亡率)は変わりません。
加熱式タバコは有害成分が1/10でも、有害性が本当に少ないかどうかは現在では全くデータがありません。
加熱式タバコで増えた成分、変わらない成分、減った成分
加熱式タバコは紙巻きタバコとの比較で「有害性成分約90%低減」、「健康懸念物質99%オフ」などと大々的に宣伝しています。
- 減少した有害物質(ベンゼンや一酸化炭素)
- 減っていない物質(ホルムアルデヒドやニコチン
- 増えた物質(プロピレングリコールやグリセロール)
90%低減、99%オフというのは、有害物質9種類についての数字です。
FDA(米食品医薬品局)がタバコ会社に求めているのは、93種類という膨大な有害物質についてのデータです。
例えばフラノン、フランメタノール、3-MCPDといった物質は毒性の高さが報告されています。
しかし人体への影響は未知数で有害かもしれない物質です。
加熱式タバコと受動喫煙
用語の解説
- 主流煙:喫煙者の吸う煙
- 呼出煙:喫煙者が吸って吐き出した煙
- 副流煙:火のついたタバコの先からでる煙
加熱式タバコでは煙は見えません。
このため副流煙はほとんど出ません。
しかし、呼出煙は室内に充満します。
主流煙で喫煙者本人が身体の中に取り込む有害成分はごく一部です。
大半は外に吐き出され、充満すればやはり受動喫煙は生じます。
受動喫煙についての記事はこちら世界禁煙デーと受動喫煙としての三次喫煙
紙巻タバコから加熱式タバコへの変更は薦められるか?
禁煙へのステップとして加熱式タバコに変更しようとか、加熱式タバコのほうが有害性が低いから切り替えようと思っていませんか?
加熱式タバコのほうがニコチン血中濃度が高くなる
加熱式タバコのニコチンは紙巻タバコよりピュアなニコチンとなっており、雑味が無いので深く吸い込んでしまう可能性があります。
実際に加熱式タバコのほうがニコチンの血中濃度が上昇したという動物実験のデータもあります。
また、加熱式タバコはアメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局 )により危険性が払しょくされていないので、(アメリカ製ですが)アメリカでの販売は許可されていません。
ニコチンには血管収縮作用があり、脳血管や心血管系の病気(脳梗塞や心筋梗塞)が起こりやすくなるかもしれないこと。
また、ニコチン依存症が強まってしまう可能性があること。
これらより、有害成分がやや少ないといった理由だけでニコチン量の多い加熱式タバコを推奨することは問題だと思います。
電子タバコの方が実は禁煙率が低い!
禁煙のために一時的に電子タバコや加熱式タバコを使おうと思っている人もいると思います。
実は電子タバコの方が禁煙成功率が低いというデータはたくさんあります。
加熱式タバコではデータはありませんが、ニコチン量が多いことを考えると恐らく同じ結果になると思われます。
以上の理由より紙巻きタバコを電子タバコや加熱式タバコに変えることは推奨できません。
電子タバコの危険性について
日本では電子タバコの販売は違法ですが、海外では普通に販売されています。
その電子タバコを輸入して違法販売が実はされています。
さらに、覚せい剤や大麻入りの電子タバコのリキッドもヤミでは出回っています。
そういう意味でも危険な商品となっています。
電子タバコ(VAPE)は安全か
ノンニコチン・ノンタールの「電子タバコ(VAPE)」もありますが、これは溶液を気化するためにアルコール類が入っています。
これが変性してジエチレングリコールやホルムアルデヒド、アクロレインといった有機化合物の有害物質がたくさん出てくることを厚生労働省が検査をして把握しています。
東京オリンピック・パラリンピックに向けて
WHO(世界保健機構)とIOC(国際オリンピック委員会)は健康的な生活習慣を推奨する同意書を交わしています。
オリンピックを開催するほどに発展した都市では、タバコの有害性をきちんと把握し、受動喫煙を防止する法律を作っていくことで合意をしています。
この中では紙巻きタバコだけでなく、他のタバコ製品の使用も禁じられています。
東京都の受動喫煙防止条例では
本来のタバコフリーオリンピック(タバコのないオリンピック大会)というWHOとIOCの合意には反しています。
それでもなぜ加熱式タバコに切り替えてしまうのか
宣伝に反応して紙巻きタバコを加熱式タバコに変えた人は、自分や家族への害を減らしたいとの希望を持っています。
その希望を禁煙でなく、喫煙の側に、ニコチン依存の側に引き留めるための極めて戦略的なツールが加熱式タバコです。
宣伝がとても上手にできているため、ほとんどの人(医療従事者も含めて)が加熱式タバコは従来のタバコより安全で家族にも迷惑をかけないと誤解しています。
まとめ
- 加熱式タバコは有害性が本当に少ないかどうかは現在では全くデータがなくわからない。
- 禁煙へのステップとして加熱式タバコに変更することは勧められず、むしろ禁煙率は下がる。
- 加熱式タバコは副流煙はないが、受動喫煙は生じる。
- 電子タバコ(VAPE)はタールやニコチンは無いが、有害な有機化合物を吸うことになる。
動画でも解説しています。チャンネル登録してもらえれば嬉しいです。
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