最新の帯状疱疹治療の勉強会に参加しました~アメナリーフ~
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こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、
西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
昨夜は津のベイシスカで行われた「第5回三重皮膚臨床セミナー」に参加してきました。
私は内科ですが、今回の特別公演が富山大学ウイルス学名誉教授の白木先生による「最新の帯状疱疹治療の話題」ということで興味を持ちました。
帯状疱疹とは
身体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みと、これに続いて赤い斑点(はんてん)と小さな水ぶくれが帯状(おびじょう)にあらわれる病気です。
この症状に由来して、「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」という病名がつけられました。
帯状疱疹は、身体の中に潜(ひそ)んでいたヘルペスウイルスの一種、水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスによって起こります。
水ぼうそうにかかったことのある人なら、誰でも帯状疱疹になる可能性があります。
マルホ(株)のホームページより引用
帯状疱疹の患者は増加傾向です
2014年10月に小児に対する水痘ワクチン定期接種化により、小児が水ぼうそうを発症しなくなりました。
その結果、高齢者が水ぼうそうの患者と接触する機会が減少しています。
そして、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫のブースター効果※1を得られず、免疫力が低下した時に帯状疱疹を発症します。
※1 免疫のブースター効果
自然に感染したときでも、予防接種を受けたときでも、再感染、あるいは予防接種を再び受けると、血中抗体が前より、より速く高く上がる性質があります。
これを追加免疫(Booster)効果といいます。
このような性質は、生体の免疫担当細胞が出会った病原体を記憶しているからです。
これを「免疫学的記憶」と言います。
帯状疱疹の治療目的は後遺症・合併症予防です
帯状疱疹自体は他人に帯状疱疹として感染はしません。
注:水ぼうそうに罹ったことのない子供には感染し「水ぼうそう」を発症します。
帯状疱疹自体は抗ウイルス薬を飲まなくても2週間ほどで治ります。
しかし、後遺症や合併症として
- 帯状疱疹後神経痛(post-herpetic neuralgia:PHN)を生じる
- 眼症状、顔面神経麻痺などが生じることがある
- 重症ではウイルス性間質性肺炎を来して死亡することもある
が挙げられます。
帯状疱疹後神経痛は半年から1年程度続き、痛みの感じとして
・「針で刺されるような痛み」
・「電気が走るような痛み」
・「焼けるようなヒリヒリする痛み」
・「衣服が擦れたり、冷風に当たったりするだけで痛みが走る」
のような痛みです。
痛みで眠れないと訴える患者さんもおり、著しくQOLを低下させます。
治療目的はなるべく早く治療を開始することで合併症の発症を予防することです。
最新の帯状疱疹治療薬:アメナリーフ®
2017年9月に帯状疱疹の新薬であるアメナメビル(アメナリーフ®)が発売されました。
アメナメビルは腎臓ではなく、肝臓で代謝されるため腎機能の低下された方でも減量することなく使えることが今までの抗ウイルス薬と違います。
また1日1回の服用で効いて(7日間服用)、錠剤も小さいため、飲み忘れが少なく服用しやすい薬です。
そして帯状疱疹ウイルスへの耐性も生じにくく、アシクロビル耐性ウイルスにも効きます。
アメナメビル服用のこつ
初診時は時間帯に関係なく、すぐに内服しましょう。
2回目からは吸収との関係から朝食直後に内服がおススメです。
ヘルペスウイルスの増殖のピークは昼間にあり、増殖前の朝に内服がベストと考えられます。
帯状疱疹の治療の進化は服薬回数の進化
抗ヘルペス薬の進化は服薬回数の進化といっても過言ではありません。
通常抗ヘルペス薬を7~10日間服用するのですが、抗ヘルペス薬の古い順に
- アシクロビル 治療期間は通常7日間から10日間。大人は1日5回飲む
- バラシクロビル 治療期間は通常7日間。大人と体重40kg以上の子供は1日に3回飲む
- ファムシクロビル 治療期間は通常7日間。1日に3回飲む
- アメナメビル(商品名:アメナリーフ) 治療期間は通常7日間。1日に1回飲む
こうやって見ていくと1日の服用回数が5→3→1と回数が減り、より確実な服薬順守が期待できます。
通常新薬は投与日数14日間の制限がありますが、元々7日間で内服終了になるため関係ないのもいいですね。
アメナメビルを服用して直ぐに帯状疱疹は治りません
アメナメビルを含む抗ウイルス薬は体内のウイルスの増殖は抑えます。
しかしウイルス自体を殺すわけではなく、ウイルスを含んだ細胞を身体の免疫システムが破壊するのを待たないといけません。
そのため免疫力が低下していると、免疫反応が立ち上がるのが遅れ、見かけ上の改善は遅れます。
おおよそ3人に1人は免疫反応が遅れ、翌日皮膚病変の改善を感じません。
しかし薬自体は効いていますので止めたりしないことが必要です。
帯状疱疹予防には水痘ワクチン
ただし一番良いのはは水痘ワクチンを接種することが予防となります。
帯状疱疹のワクチン=「水痘ワクチン」
帯状疱疹のワクチンは正しい名称は「水痘ワクチン」です。
毒素の弱まった水痘・帯状疱疹ウイルスを凍結させた後、乾燥させたもので造られた生ワクチンです。
帯状疱疹の発症する年代が50代~60代に多く、加齢により免疫力が低下するにしたがって重症化したり、帯状疱疹後神経痛になるリスクが高くなっています。
ワクチンを接種することで、帯状疱疹の発症率が65%にまで低下した実験結果が報告されています。
帯状疱疹を予防するには50代の方からの予防接種は大事になってきています。
水痘ワクチンの特徴・ワクチンを接種すると帯状疱疹の発症率を51.3%減少する。
・ワクチンを接種すると帯状疱疹後神経痛の発症率を66.5%減少する。
・ワクチンを接種すると、帯状疱疹を発症しても症状が軽くなる。
・高齢での接種は効きが悪くなるため、50〜60歳代での接種が推奨される。
・接種後10年くらいでの再接種が予防ために推奨される。
ワクチンは自費診療で予約が必要です
帯状疱疹の治療が遅れると後々まで帯状疱疹後神経痛が残ります。
高齢者の方には特にお勧めです。
ただし自費診療となります。
当院では8000円にて接種しております。
接種は電話予約(0598-56-2250)が必要です。
50歳以上で免疫機能に異常が無ければ接種出来ます。
帯状疱疹の新ワクチン(Shingrix)
帯状疱疹は一度かかると免疫のブースター効果により再発することは(免疫力が低下していない限り)ありません。
しかし、帯状疱疹を出現させないためにはワクチン接種をするのが一番です。
現在、帯状疱疹予防で使われるワクチンは水痘ワクチンです。
数年後にはグラクソ・スミスクライン社より〈Shingrix〉という新ワクチンが登場予定です。
この新しい帯状疱疹ワクチンは治験段階で97.2%の有効性があり、高齢者でも有効性が変わらないとのことでした。
数年後には発売されるのではないかとのことです。
最近は若年層にも帯状疱疹があります
また帯状疱疹は最近若年層にも多く見られています。
幼児期に水ぼうそうに罹ってても、そのときに作られた免疫は20年後には弱くなります。
大人になっての水ぼうそうは重症になりやすい
大人になってからの水ぼうそうは小児期に済ませる他の感染症と同じく、感染すると重症化しやすくなります。
高齢になり発症した場合は、重症化するリスクが高くなり、肺感染症などの呼吸器疾患を併発させることもあります。
成人しても水ぼうそうに感染していない方は、もし感染した場合に重篤な疾患を招く恐れがあります。
また成人してからのワクチン接種は水ぼうそうの予防にもなりますが、帯状疱疹への予防へも繋がりますので、早めのワクチン接種をお勧めします。
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