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心機能が悪くない心不全が増えています

 
この記事を書いている人 - WRITER -
1974年生まれ。2000年三重大学医学部卒業。三重県松阪市で内科クリニックを10年前からしています。診療所に併設して有料老人ホーム、認知症対応型グループホームもあり、自宅生活の方も含め在宅医療も行っています。 また、インスタグラムでフォロワー1万人超のアカウントを2つ運営するインスタグラマーでもあります。 地域のかかりつけ医として気軽になんでも相談してください。医療と介護の両面から一緒に考えます。
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先日参加した勉強会は「糖尿病は循環器の中心である」というタイトルでした。

その話の中で、最近の高齢者の心不全は心機能が悪くない心不全が多いとのことです。

 

心機能が悪くない心不全とはどんな状態?

心臓は血液を身体中に循環させるために伸びたり縮んだりを繰り返します。

昔から言われている心不全は縮む力が弱り、全身へ血液を送れなくなるタイプです。

最近高齢者に多い心不全は伸びる力が低下したタイプ(拡張機能不全)です。

 

拡張機能低下型の心不全とは

心臓へ血液が戻る力が弱くなっているため、血液が身体中に溜まり、むくみなどの症状が起こりやすいといった特徴があります。

実際には、拡張機能を正確に評価することが難しいので、「収縮機能が保たれた心不全」(heart failure with preserved ejection function: HFpEF〈ヘフペフ〉)と呼ばれています。

 

心臓の拡張機能は身体の筋力と相関する

勉強会の話では、筋力が低下して痩せた高齢者に拡張機能が低下した心不全が生じやすく、治しにくいとのことでした。

心臓も筋肉が伸び縮みを繰り返して働いているので、身体の筋肉同様に負荷をかけずにいると痩せて弱っていきます。

 

拡張機能低下型の心不全は症状が出にくい

拡張機能低下型は、収縮機能は保たれているため心不全症状が出にくいです。

肺がん検診などで胸部レントゲンを撮影しても、収縮機能低下型心不全では心臓が拡大しているので分かりやすいのですが、拡張機能低下型ではさほど心臓が拡大しません。

拡張機能低下型心不全はレントゲンでは分かりにくいので、心臓超音波検査や血液中の脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の測定が必要です。

  • 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)とは心臓の筋肉から出るホルモンです。
  • 心臓に負担がかかっていると、数値が上昇します。
  • 心臓が楽になりたくて出すいわばSOSのサインといえます。

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拡張機能低下型の心不全の悪化予防

フレイル・サルコペニアを予防する

フレイル(Frailty)とは、高齢者の筋力や心身の活力が低下した状態(虚弱)を指します。

サルコペニアは、筋肉量が減少して、筋力や身体機能が低下している状態(筋力低下)のことです。

心臓の筋肉も運動をし、たんぱく質を摂ることで高齢になっても鍛えられます。

引用:https://www.jhf.or.jp/heart_failure/04.html

 

拡張機能低下型の心不全の治療

収縮機能不全型の心不全治療は色々な研究結果が出ていて、エビデンスを持った薬がいくつも発売されています。

拡張機能低下型の心不全は高齢者に多いため、他の病気を合併することも多くまだまだ研究結果が不十分ですが、今は収縮機能不全型の心不全治療に準じて行っています。

今回の話では最近発売された糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬は利尿作用もあることで身体の余分な水分を除去し、拡張機能低下型の心不全治療にも今後期待が持てるとのことでした。

院長
今の所SGLT2阻害薬は糖尿病にしか保険適応が無いため、心不全単独では処方できません。今後の研究により保険適応が拡大されるかもしれないですね。

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まとめ

  • 拡張機能低下型の心不全は高齢者に多い。
  • 高齢者特有の身体機能低下と相まって拡張機能低下型の心不全は分かりにくい。
  • フレイル・サルコペニア予防が拡張機能低下型の心不全の悪化予防となる。
  • SGLT2阻害薬は心不全治療への将来性がある。

 

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