前夜に食べ過ぎていないのに朝の血糖値が高くなるのはなぜ?
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こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、
西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
診察やインスタからの質問で「前夜に食べていないのに朝の血糖値が高いです」といった相談を受けることがあります。
そこで、今回は朝に血糖値が上昇する仕組みを解説です。
朝に血糖値が高くなる理由
1.暁現象
「暁」とは、東の空が白みはじめる頃です。
夜間の血糖変動を見ていくと、暁(深夜3時頃から朝方)にかけて、血糖値が自然に上昇していくことを「暁現象」といいます。
これは1979年に、シュミットらが1型糖尿病の夜間の血糖値の推移を観察して報告した現象です。
インスリン拮抗ホルモン(血糖値を上昇させるホルモン)の日内変動が関係しています。
深夜帯から朝方にかけて、血糖値を上昇させるホルモンの影響と比べ、投与したインスリン量が不足していることにより、血糖値が自然に上昇していきます。
特に成長ホルモンの影響が大きく、成長期に多いとの報告もあります。
「寝る子は育つ」と言われるように、成長ホルモンは夜の早い時間帯に分泌のピークがあります。
成長ホルモンの分泌が、3~5時間の時間差で血糖値を上昇させます。
膵臓からのインスリン分泌が不足している2型糖尿病でも、暁現象が見られることがあります。
2.ソモジー効果
「ソモジー効果」とは、インスリン療法を行っている患者さんで、低血糖の後に反動的に血糖値が上昇する現象です。
「ソモジー効果」のソモジーは発見者の名前です。
低血糖状態では、カテコールアミン(ノルエピネフリン、エピネフリン)やコルチゾールといったインスリン拮抗ホルモンが分泌され、その結果、高血糖となります。
夜間に低血糖が生じた場合は、早朝に血糖値が上昇します。
例えば、朝目覚めたら血糖値が高く、かつ汗をかいており、なんとなく体がだるいというのはソモジー効果かもしれません。
ただし、カテコールアミンやコルチゾールなどのインスリン拮抗ホルモンが不足していたり、反応が悪いとソモジー効果はおこりにくくなります。
3.インスリン不足
2型糖尿病で起床時高血糖の場合、ほとんどの原因はインスリン不足です。
インスリン分泌の減少や作用の低下によって肝臓からのブドウ糖の放出が続き、寝ている間に少しずつ血糖が上がります。
4.その他
夕食を食べすぎた、前日の夜のインスリンが不足だった、服用した薬の量が不正確だった、就寝前のスナックなどの炭水化物の影響、等々。
朝の血糖値を低くするには
暁現象は、特に1型糖尿病では成長期の年少者に多くみられますが、病歴が長くなると少なくなります(おそらく成長ホルモンが減って、体が大きくなった分、インスリン単位が増えてくるためではないでしょうか)。
2型糖尿病の場合は、逆に病歴が長くなるほど、つまり、ベータ細胞の機能低下でインスリン治療が必要になってくるに従って暁現象が現れるようになります。
1型糖尿病では基礎インスリンとして、ランタスやトレシーバといった持効型インスリンを使うと暁現象が穏やかになることが知られています。
暁現象のある、インスリンポンプ治療の人は、早朝時間の基礎インスリンを少なくとも20%増やすことが勧められています。
インスリンを使わない2型糖尿病の人は、夕食のタイミング調整と炭水化物の量を減らして、就寝時の目標血糖値を70~110mg/dlに収めましょう。
もし、食事コントロールで不十分でしたら、夕食時に中間型インスリンや長時間作用のSU薬を処方することもあります。
もし、暁現象が続く場合は、基礎インスリンを使うことも選択肢の一つです。
一般にはメトホルミンを服用して、肝臓からのブドウ糖放出を制限することが多いと思われます。
ソモジー効果は、1型糖尿病の人がインスリンを使いすぎたり、アルコールの摂取、夕食が少なすぎたりすることが原因です。
そのため対策法は暁現象とは逆です。
血糖値が下がりすぎないように就寝時にスナックを取ったり、就寝中の低血糖を避けるためにピークのある中間型インスリンをフラットな持効型インスリンに代えたりすることが勧められます。
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