古くて新しい便秘症の浸透圧性下剤「モビコール」
スポンサーリンク
昨年の11月に新しい便秘症の薬として「モビコール」が発売されました。
古くて新しいという意味はモビコールは既に欧米では第一選択薬となっているポリエチレングリコール製剤だからです。
モビコールとは
- 新しい作用機序の慢性便秘症治療薬(浸透圧性下剤:ポリエチレングリコール製剤)
- 効果は用量依存的
- 日本小児栄養消化器肝臓学会からの開発要請を受けて開発
浸透圧性下剤に分類される薬剤です。
腸管内の水分量を増やして便をやわらかくして排便を促します。
効果は用量依存的です。
そのため飲む量を増やせば便秘改善効果も副作用発現率も上がります。
よって便秘の改善度合いに合わせて、個々人で適切な量に調節します。
あくまでも私感ですが、これまで刺激性下剤を長期連用して難治性の便秘となっている人にも容量を増やせば効きます。
薬価と服用時の多量水分摂取さえ気にならないのであれば、安全性も高く非常に使いやすいですね。
ポリエチレングリコール製剤は、海外では小児も含めた便秘治療に広く用いられています。
欧米のガイドラインでも使用が推奨されています。
そのため、日本小児栄養消化器肝臓学会から小児慢性便秘症に対するポリエチレングリコール製剤の開発要請が出されて開発が行われたという経緯があります。
スポンサーリンク
ポリエチレングリコール製剤について
ポリエチレングリコールとは?
Wikipediaより引用
ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、略称 PEG, マクロゴールとも)は、エチレングリコールが重合した構造をもつ高分子化合物(ポリエーテル)である。 ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide、略称PEO)も基本的に同じ構造を有する化合物であるが、PEGは分子量2万程度までのもの、PEOは数万以上のものをいう。両者は物理的性質(融点、粘度など)が異なり用途も異なるが、化学的性質はほぼ同じである。
ポリエチレングリコールは実験から化粧品から医薬品まで、幅広い用途で用いられています。
医薬品では軟膏基材や坐薬基材、錠剤の滑沢剤などに用いられています。
ポリエチレングリコールは分子量によって性質がかなり異なります。
モビコールに使われているのは「マクロゴール4000」です。
マクロゴール4000は常温で固体で、極めて水に溶けやすく、溶解性が電解質に影響されません。
ポリエチレングリコール製剤とは
これまでも「モビプレップ」というポリエチレングリコール製剤があります。
モビプレップは大腸透視や大腸内視鏡検査の前処置用、大腸手術時の前処置における腸管内容物の排除に2013年から発売されています。
また、海外の便秘症ガイドラインでも以前からポリエチレングリコール製剤は慢性便秘症の第一選択治療薬として推奨されています。
ポリエチレングリコール製剤の特徴
ポリエチレングリコールに保持された水分は腸管で吸収されにくく、腸管内及び便中水分量を増加させます。
その結果、便容積が増大し、生理的な大腸蠕動(ぜんどう)運動が活発になります。
ポリエチレングリコールは体内へ吸収されにくく、電解質を配合していることにより電解質バランスが維持されます。
安全性の高さよりモビコールは2歳以上への小児への適応もあります。
スポンサーリンク
既存の浸透圧性下剤(酸化マグネシム)と比べてのメリット
- 小児適応がある
- 慎重投与・併用注意が少ない
酸化マグネシムは吸着作用・制酸作用があるため、他の薬剤の吸収・排泄に影響を与える場合があります。
抗菌薬(テトラサイクリン・ニューキノロン等)やビスホスホネート、活性型ビタミンD3製剤と併用注意です。
スポンサーリンク
既存の浸透圧性下剤(酸化マグネシム)と比べてのデメリット
- 水に溶解する必要がある
- 先発品扱いで薬価が高い
- 先発品なので2019年11月までは14日処方
1包あたり60mLの水に溶解します。
溶けるのに少し時間がかかります。しっかり溶かしましょう。
1回辺りの最大投与量の1回4包だと240mLの水に溶解です。(最大投与量は1日6包です。)
また1包83.9円と下剤にしては薬価が高めです。
スポンサーリンク
まとめ
モビコールが有用と思われる患者像
- 適応さえあれば誰でも使えます
- 長期にわたって便秘薬を飲んでいる患者
- 小児の便秘症
個人的には薬価も考えると酸化マグネシムが第一選択です。
併用薬で酸化マグネシムが使いにくい人や腎機能低下で高マグネシム血症のリスクがある人にはモビコールを第一選択でもいいかなと思います。
また、刺激性下剤を長期間に渡って使用して難治性便秘となっている方にはお薦めです。
便秘治療薬の比較記事最新の便秘治療薬4選
スポンサーリンク