【医師が解説】夜間頻尿の原因と対策について
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こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、
西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
おしっこのために夜中に起きなければならない症状を「夜間頻尿(やかんひんにょう)」といいます。
排尿に関する症状のうち最も訴えの多いものです。
夜間頻尿の有病率と定義
40歳以上の男女で、約4,500万人が夜間1回以上排尿のために起きる夜間頻尿の症状を有していると推測されています。
夜間頻尿は、日常生活において困る症状で、年齢とともに頻度が高くなります。
専門的には、1回以上起きれば「夜間頻尿」ですが、実際の現場では2回以上を問題にして診療しています。
夜間頻尿の原因
夜間頻尿の原因は、多尿(夜間多尿:夜間の尿量が多いこと)、膀胱容量の減少、睡眠障害に分けられます。
夜間頻尿の原因その1.多尿(夜間多尿:夜間の尿量が多いこと)
多尿による夜間頻尿は尿量が多くなるために、夜間トイレに何度も起きてしまいます。
朝起きた時の尿量も含めた夜間の尿量が1日総尿量の1/3以上になり、1回の排尿量は正常です(150~200ml以上)。
多尿の原因としては、糖尿病などの内分泌疾患、水分の摂り過ぎなどがあります。
夜間多尿の原因
- 高血圧
血圧調節ホルモンのバランスが崩れて、腎臓の血液の巡りが悪くなり夜間に尿量が増えます。
- うっ血性心不全(心臓の働きが弱った状態)
心不全の初期では昼間に生じたうっ血状態を自ら改善させるために、夜間の尿量を相対的に増加させて、心臓の負担を軽減しています。
- 腎機能障害などの全身性疾患
腎臓の劣化により、尿の濃縮力の低下に加え、水分や食事摂取後の速やかな水分排泄機能が低下し、遅れて水分を排泄するために夜間の尿量が増加してきます。
呼吸を妨げられるために目覚め、結果として「夜間頻尿」になっています。
夜間頻尿の原因その2.膀胱容量の減少
膀胱容量の減少は、少量の尿しか膀胱に貯められなくなるものです。
過活動膀胱や前立腺炎、膀胱炎などで膀胱が過敏になるために起こります。
過活動膀胱は膀胱に尿が少量しか溜まっていないのに膀胱が勝手に収縮してしまう病気です。
過活動膀胱の記事はこちら⇒男性の排尿障害の原因と治療 前立腺肥大症と過活動膀胱
夜間頻尿の原因その3.睡眠障害
睡眠障害は、眠りが浅くてすぐ目が覚めてしまうために、目が覚めるごとに気になってトイレに行くものです。
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自分でできる夜間頻尿チェック:排尿日誌
夜間頻尿の原因は様々です。
適切な対処をするためには原因を明らかにすることが必要です。
自分でできるチェックには、排尿日誌があります。
朝起きてから翌日の朝まで、排尿した時刻とメモリ付コップなどで測定した排尿量を日記のように記録します。
1回の排尿量(膀胱に溜めることができる膀胱容量)と排尿回数を知ることができ、おおよその原因を知ることができます。
下図の例では、就寝後から朝までの尿量が多く、1回排尿量は正常なので、夜間多尿が夜間頻尿の原因であることがわかります。
最近はスマホアプリでも排尿日誌があります。
夜間頻尿の治療と対策
高血圧、心疾患、腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群などによる夜間多尿の場合は、基礎疾患の治療が重要です。
水分を摂ると血液がサラサラになり、脳梗塞や心筋梗塞が予防できると信じて寝前や夜間にたくさんの水分をとる方がいますが、科学的根拠はありません。
水分の摂りすぎで頻尿になっている場合は水分を控えることが必要です。
水分の摂り過ぎによる夜間多尿の場合には、水分を控えるだけでも改善します。
水を飲んでから1時間後では、補給した水分の16%ほどが尿となります。
時間と共に尿になる割合は増えていき、6時間経過するとほとんどが尿となります。
あくまで寝る前の水分摂取を控えることです。
過活動膀胱では、膀胱の勝手な収縮を抑える薬剤(抗コリン薬、β3作動薬)を服用します。
睡眠障害による夜間頻尿には、睡眠薬の内服も有効ですが、よく眠れるような環境の整備や生活リズムの改善も重要です。
原因がはっきりしない場合は、泌尿器科専門医を受診して、まず原因のチェックから始めることが重要です。
「夜間頻尿」は、多くの要因が関連した症状と考えられます。
調べると隠れた関連疾患の発見のきっかけとなる可能性があります。
「夜間頻尿」によりたびたびの夜間覚醒を繰り返し、睡眠の質を悪化させると、寝覚めの悪さ、日中の眠気や倦怠感などで日常生活にも影響が及びます。
高齢者では、夜間の転倒による外傷や骨折の原因にもなりかねません。
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まとめ
- 夜間頻尿がある人はかなり多い。
- 夜間頻尿の原因は、多尿(夜間多尿:夜間の尿量が多いこと)、膀胱容量の減少、睡眠障害の3つがある。
- 基礎疾患がある場合は基礎疾患の治療が必要です。
- 寝る前に水分を摂るのは控える。
- 夜間頻尿がひどくなると日常生活にも支障をきたすため、頻尿の原因検索と治療が必要です。
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