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障害者雇用率の水増し問題に一雇用主かつ一障害者として思うこと

 
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1974年生まれ。2000年三重大学医学部卒業。三重県松阪市で内科クリニックを10年前からしています。診療所に併設して有料老人ホーム、認知症対応型グループホームもあり、自宅生活の方も含め在宅医療も行っています。 また、インスタグラムでフォロワー1万人超のアカウントを2つ運営するインスタグラマーでもあります。 地域のかかりつけ医として気軽になんでも相談してください。医療と介護の両面から一緒に考えます。
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はじめに

複数の中央省庁や地方自治体が、障害者の雇用率を長年水増ししてきた疑いを最近報道されています。

障害者手帳を持っていない人を障害者雇用率制度の対象障害者として計算していました。

中には糖尿病で(合併症による透析などをしていなくても)自己申告で障害者としてカウントしていたらしいので呆れてしまいます。

私自身、雇用主側として障害者雇用率が満たせず障害者雇用納付金を払ったこともあります。

また、自分自身が1級の身体障害もあることから雇用される側としても憤りを感じます。

なぜ身体障害者となっているかは過去記事を参照今日からお休みです。

 

障害者雇用促進法では一定割合以上の障害者雇用義務がある

障害者雇用促進法は1976年の改正で、従業員の一定割合以上の障害者を雇用することを義務化しています。

しかも障害者の法定雇用率は2018年4月から、国と地方自治体は2.3%から2.5%に、民間企業は2.0%から2.2%に引き上げられたばかりです。

 

障害者雇用率の算式(厚生労働省のWebサイトより)

この算式の意味は、障害者の失業率を日本全体の失業率に一致させるように法定雇用率が定められています。

 

障害者雇用率制度:従業員における障害者の割合を一定以上にする義務

従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。(障害者雇用促進法43条第1項)

民間企業の法定雇用率は2018年4月に引き上げられ、2.2%です。

従業員を45.5人以上雇用している企業は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。

 

障害者雇用数が足りないと障害者雇用納付金を納めないといけません

障害者雇用の水準を高めることを目的として 「障害者雇用納付金制度」が設けられています。

具体的には、

  • 法定雇用率を未達成の企業のうち、常用労働者100人超の企業から、障害者雇用納付金が徴収されます。
  • この納付金を元に、法定雇用率を達成している企業に対して、調整金、報奨金を支給します。
  • 障害者を雇い入れる企業が、作業施設・設備の設置等について一時に多額の費用の負担を余儀なくされる場合に、その費用に対し助成金を支給します。

 

障害者雇用納付金の徴収

常時雇用している労働者数が100人を超える障害者雇用率(2.2%)未達成の事業主は、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金を納付しなければならないこととされています。

常時雇用している労働者数が100人を超え200人以下の事業主については、平成27年4月1日から平成32年3月31日まで障害者雇用納付金の減額特例(不足する障害者1人につき月額「50,000円」を「40,000円」に減額)が適用されます。

 

障害者雇用調整金の支給

常時雇用している労働者数が100人を超える事業主で障害者雇用率(2.2%)を超えて障害者を雇用している場合は、その超えて雇用している障害者数に応じて1人につき月額27,000円の障害者雇用調整金が支給されます。

 

報奨金の支給

 常時雇用している労働者数が100人以下の事業主で、各月の雇用障害者数の年度間合計数が一定数(各月の常時雇用している労働者数の4%の年度間合計数又は72人のいずれか多い数)を超えて障害者を雇用している場合は、その一定数を超えて雇用している障害者の人数に21,000円を乗じて得た額の報奨金が支給されます。

 

障害者の求職は一般枠と障害者枠の2通りあります

1.一般枠と障害者枠の違い

一般枠は一般求職者と同じ条件で就職します。

障害者枠は「障害者雇用率制度」の枠内で就労します。

障害・特性をオープンにして配慮を求めることができます。

障害者手帳の所持が必須です。

 

身体障害者手帳を持てる障害とは身体障害者手帳の申請手続きと障害者等級

 

障害者手帳とは身体、知的、精神障害があることを証明する書類で、以下の3種類があります。

①身体障害者手帳
②療育手帳=知的障害があることを証明する書類。東京都の場合「愛の手帳」。地域によって名前が異なることもあります。
③精神障害者保健福祉手帳=精神の疾患や障害があることを証明する書類。

 

今回の問題は障害者手帳を確認することなく障害者として採用し、障害者雇用率を満たしたことが問題となっています。

 

2.一般枠のメリットとデメリット

メリット

・職種の幅が広く、専門職も多い

・待遇面がよく、キャリアアップのチャンスもある

デメリット

・仕事の幅や責任が増え、残業が入ることもある

・昇格するとリーダーシップを求められることも有り、職場内や周囲から障害特性を配慮してもらえない

 

3.障害者枠のメリットとデメリット

メリット

・大企業やその系列会社が多く安定している

・数年後には正社員に登用されるケースが増えてきている

・個人の特性を配慮してもらえる

・多くの場合、残業はない。

デメリット

・職種が軽作業か事務作業程度しかなく専門職が少ない

・年数がたっても同じような仕事しかしないため、昇給がしにくい

 

障害者の求職方法

1.ハローワーク

ハローワークでは障害者求職登録をすると、障害者枠での求職活動ができます。

ハローワークでの求人情報の掲載は無料ですので、採用活動の予算が少ない中小・零細企業の求人が多い傾向があります。

障害者求人情報簡易検索はこちら

 

2.障害者専門求人サイト

障害者専門の求人サイトでは、お金や労力を掛けてでも、障害者の雇用を積極的に進めたいと考えている企業が求人情報を掲載しています。




雇用の現実は

雇用する側からいうと、同じ障害者でも身体障害者は雇うためのハードルが低いです。

身体障害の部分を配慮すれば後は一般の人と同じ仕事量を期待できます。

知的疾患や精神障害となると付添人が必要となる場合や、雇う側にも専門知識が必要な場合もあります。

特に仕事がない状態でも障害者雇用率を満たすために何か仕事を作り、受け入れを促進しなければならなくなります。

ある程度は義務化は必要ですが、障害者を雇要している福祉事業所に仕事を外注するといったことも雇用率にカウントするなど、社会全体で数字を達成する仕組みへと見直すべきでは思うのが、一雇用主かつ一障害者でもある私の考えです。

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