健康診断で血糖値が高いと言われたら ~境界型糖尿病って何?~
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先日、定期的に睡眠導入剤だけを処方のため来院している患者さんから
「今年の職場の健診で血糖値が高いと指摘され、職場から受診を促されました。
でも以前から糖尿病※1になりかけていますって健診で毎年言われてましたが、放っておいてました。
のどもよく渇きます。」
と言って、健診結果を持ってこられました。
食べ物に含まれるブドウ糖は体内に取り込まれると、エネルギーとして利用されます。しかし、インスリンの作用が弱いとブドウ糖(血糖)を上手く利用できず、血糖値が高くなります。このような状態が続くと様々な合併症を発症し、放置しておくと失明や透析に至る恐ろしい病気です。
医学的に糖尿病になりかけとは「境界型糖尿病」のことです
健診結果を見せていただくと,HbA1c※2(ヘモグロビンエーワンシー)が9.8%でした。
しかも一昨年からの結果が一緒に書かれていています。
2年前のHbA1cも8%くらいありました。
糖尿病になりかけているではなく、既に立派な糖尿病です。
※2 HbA1cとはHbA1cは、赤血球に存在するヘモグロビン(Hb)に、ブドウ糖が結合したものです。
血液中のブドウ糖が多いほどHbA1cの値は高くなり、HbA1c値は過去1~2か月の血糖コントロールの状態を反映します。
当日の食事や運動など短期間の血糖値の影響を受けません。
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糖尿病が疑われる時の検査
75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)
検査当日の朝まで10時間以上絶食した空腹のまま採血し、血糖値を測ります。
次に、ブドウ糖液(ブドウ糖75gを水に溶かしたもの:トレーランG)を飲み、ブドウ糖負荷後、30分、1時間と2時間後に採血し、血糖値を測るという検査です。
ただし、自覚症状などから明らかな高血糖が考えられる患者さんに75gOGTTを行うと、さらに高血糖を引き起こすリスクがあるので行いません。
75gOGTTで2時間値200mg/dL以上ある場合は、「糖尿病型」と診断されます。
当院での糖尿病が疑われた時の流れ
健診結果を持ってきて頂いた場合は、血糖値やHbA1cを見せて頂きます。
そして問診・診察・採血・尿検査などを初診時に行います。
当院では、境界型糖尿病ならば糖尿病に移行させないことがポリシーです。
既に糖尿病となっていれば、血糖コントロールはもちろんですが、糖尿病による合併症の検索・進行予防を他科の先生とも連携して行っていきます。
糖尿病教育入院を連携病院で希望される場合は紹介も可能です。
初診時の検査で「境界型糖尿病」が疑われる場合には別の日に75gOGTT検査を予約して行います。
※75gOGTT検査は最低でも2時間はかかる検査です。朝9時頃までには来院が必要です。
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境界型糖尿病とは
上記の図の「境界型」と書かれた部分がいわゆる糖尿病になりかけている状態です。
2型糖尿病はある日突然糖尿病になるわけではありません。
数年をかけてゆっくりと糖尿病になっていきます。
糖尿病と診断されるほど血糖値が高くないけれど、正常より血糖値が高くなってきた状態を「糖尿病の境界型」や、「糖尿病予備群」と言ったりもします。
境界型であれば、食事療法・運動療法のみで血糖値を改善していくことも十分可能です。
関連記事はこちら。→最近の糖尿病食事療法
境界型糖尿病になると生じること
糖尿病になりかけていると言われた方のなかには、
「糖尿病ではないからまだ大丈夫。
今は食生活を改善したり、運動をしたりする必要はない。」
と考えている人いませんか。
自己判断で高血糖を放置するのは危険!
境界型糖尿病になると、身体の中はすでに変化が起き始めています。
例えば、血糖値を下げるインスリンが膵臓から出にくくなる、効きにくくなるといった変化は、糖尿病と診断されるずっと前の段階からあると言われています。
また、血糖値が高い状態が続くと全身の血管にダメージを与え、動脈硬化を進展させます。
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糖尿病の診断基準
この方の場合、上のチャートから判断しても2年前から糖尿病です。
「なりかけている。」といった伝え方は逆に治療の機会を遅らせて、その結果、糖尿病による合併症の併発につながります。
健康診断で「糖尿病になりかけです」と言われたら
あくまでも健診は異常の有無を調べるだけで、診断をつけるものではありません。
健康診断だけで糖尿病になりかけかどうかは判断できません。
血糖値異常や尿糖陽性を指摘されたら詳しい検査を受けましょう。
まとめ
・健康診断だけでは糖尿病になりかけているかどうかは判断できません。
・「糖尿病になりかけです。」と言われたら、病院へ行って精密検査を受けて境界型糖尿病かそれとも完全に糖尿病か判断してもらいましょう。
・境界型糖尿病の時点では無症状でも身体の中ではすでに変化が起こっています。
・境界型糖尿病であれば食事療法・運動療法だけでよくなる可能性があります。
ちなみに冒頭の患者さんはあまりに血糖値が高く、75gOGTTをするまでもなく糖尿病です。
食事療法・運動療法だけでは血糖値が改善困難と思われ、即座に内服治療開始となりました。
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こんにちは❗️ 三重県松阪市の 糖尿病診療が得意な 西井医院院長👨⚕️(@yoshi24144 )です。 インスタのDMなどから時々 「糖尿病になりかけ」と 言われたのですが、 どうしたらいいでしょうと 相談があります。 「糖尿病になりかけ」と 医学的に判断するには、 75g経口ブドウ糖負荷試験 (75gOGTT)が必要です。 75gOGTTについて詳しくは 4~7枚目を見てください。 もし「境界型耐糖能異常」と判断されたら、 投薬治療は基本不要ですが、 食事・運動療法は必要です。 その後も糖尿病に進行してないか 半年から1年に1回は検査を することが望ましいです。 なお75gOGTTは必ず予約が必要です。 糖尿病について詳しく知りたい方はブログも読んでくださいね。 ⇩ プロフィールより 「e-dpctor.mie.jp/link-tree」をタップ ⬇️ 「院長ブログ」をタップしてカテゴリーより 「糖尿病」を選択してください。 ———————– 血糖値が気になる人や糖尿病が気になる方は インスタグラムから診察予約を することもできます。 ⬇️ 「西井医院」で検索 またはプロフィールより 「e-dpctor.mie.jp/link-tree」をタップ ⬇️ 「外来診察の予約」をタップしてくださいね。 質問や取り上げて欲しい内容があれば コメント欄からお願いします。
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