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大人の喘息は慢性の病気です ~治療を勝手に止めないで~

 
この記事を書いている人 - WRITER -
1974年生まれ。2000年三重大学医学部卒業。三重県松阪市で内科クリニックを10年前からしています。診療所に併設して有料老人ホーム、認知症対応型グループホームもあり、自宅生活の方も含め在宅医療も行っています。 また、インスタグラムでフォロワー1万人超のアカウントを2つ運営するインスタグラマーでもあります。 地域のかかりつけ医として気軽になんでも相談してください。医療と介護の両面から一緒に考えます。
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喘息治療はきちんと続けることが重要

喘息の治療を始めてしばらくしたら、

「喘息の発作も無くなったので喘息が治りました。」

「お薬を止めてもいいですか?」

と聞かれることがあります。

喘息は風邪ではありません。

高血圧や糖尿病と同じように喘息は慢性の病気です。

院長
喘息症状が無くても治療が必要です。

 

ある気管支喘息の女性患者さんの場合

最近、紹介状を持参して来院した若い女性の患者さんがいました。

紹介状を開封するとなぜか発行日が3月半ばです。

(※来院されたのは11月でした。)

院長
この時点でとっくに薬が切れてますね。

話を聞くと咳が止まらず総合病院の呼吸器内科を受診したそうです。

呼気NO検査なども受けて気管支喘息と診断されてます

シムビコートを処方されSMART(Symbicort maintenance and reliever therapy)療法を指示しましたと紹介状にあります。

(※SMART療法とはシムビコートのみに認められた、定期吸入に加え、発作時にも頓用でシムビコートを吸入する治療法です。)

SMART療法の動画はこちら→https://m.youtube.com/watch?v=uph7rLcyTGs

 

でも話を聞くと定期吸入はせず、咳が出たりするときのみにシムビコートを吸入していたとのこと。

それではSMARTではなくSRT(Symbicort reliever therapy)療法です。

とりあえず吸入治療の継続の必要性を説明してシムビコートを処方しましたが、きちんと指示通りに吸うかは疑問です。

院長
その後この患者さんは来院しなくなりました…。

 

喘息の症状がある時だけ吸入薬を使うのではダメ?

喘息発作が無くても治療は必要です。

咳や痰、息苦しさや「ゼーゼー」・「ヒューヒュー」といった喘鳴(ぜいめい)といった症状は、喘息の病気の一部でしかありません。

喘息の根底には、気管支の慢性的な炎症があります。

 

喘息の治療では発作が起きた時の治療も行いますが、気管支の炎症を抑えて発作が起こらないようにすることが大事です

発作が無くても治療をきちんと続けることで、喘息症状がコントロールすることができます。

私が医師になりたての頃は救急外来へ喘息発作で受診される方が多かったです。

救急外来でステロイド点滴や気管支拡張剤の吸入処置をよくしました。

しかし最近は吸入製剤の進化もあって、喘息のコントロールが良くなりました。

喘息発作で来院される方がめっきり減っています。

吸入ステロイドと長時間作用型β刺激薬の合剤がよく使われ、吸入当初より症状改善効果が強くよく効きます。

 

喘息の調子がいいから薬を止めてもいいですか?

気管支喘息は気管支の炎症が原因で起こる病気です。

気管支喘息の症状が無くても、気管支には炎症が残っています。

薬を止めた気管支は炎症により赤くなっています。

炎症を放置していると、喘息が悪化します。

その結果、喘息が治りにくくなったり、死に至る喘息発作を来すこともあります。

炎症を抑える薬(主に吸入ステロイドです)をキチンと続けることで、喘息の悪化を予防し、喘息症状をコントロールすることが必要です。

 

吸入ステロイドはステロイドの副作用が心配で使いたくない

吸入ステロイドは気管支に直接働くことで、効果的に気管支に限局して炎症を抑えます。

また、吸入量はごく少量であり、飲み薬や注射のステロイドのような全身性の副作用はほとんどありません

喘息症状のない生活を続けるためには、吸入ステロイドを使い続けることが必要です。

吸入ステロイドも喘息症状が落ち着いている場合は徐々に減らしていく事ができます。

院長
自分で勝手に判断して止めないでください。風邪などを契機に喘息がぶり返すことがあります。

 

高齢で認知症があり吸入ステロイドが上手に吸えません。

吸入ステロイドを吸入指導しても、どうしてもうまく吸えない方もいます。

吸入ステロイドは上手に吸わないと肺へ到達しません。

そんな方には「スペーサー」を利用するとよいでしょう。

 

当院でもスペーサーを販売しております。

1個3,000円(マスク無し)・5,000円(マスク有り)程度です。

初回は使い方を含めた吸入指導が望ましいです。

当院では購入して頂いたマウスピースを目の前で装着して頂き指導をしています。

マウスピースが上手くくわえられない方はマスク付きを選ぶとよいでしょう。

 

 

季節の変わり目(9~10月と4~5月)は喘息発作が起こりやすい

喘息発作を起こしやすい時期が、秋の9月、10月と次に春の4月、5月です。

院長
喘息発作自体は1年中いつでも、季節に関係なく起こりますよ。あくまで発作を「起こしやすい」です。

 

この時期は昼と夜の温度差が激しく、気温の急激な変化によって発作が起こりやすくなります。

秋は台風シーズンですし、気候が不安定で前日との気温差、昼と夜との気温差が大きい時期です。

空気も冷たく乾燥してきます。

健康な人でも、気を抜くと体調を崩しやすく、風邪を引きやすい時期です。

風邪を契機にとか、冷たい空気が気管支を刺激することで、喘息発作を起こす方が増えやすいです。

 

秋の喘息は咳喘息が多い

この時期の喘息は「ヒューヒュー」といった喘息発作ではなく、「咳喘息」が生じやすいです。

症状としては風邪の後にしつこく空咳が続きます。

風邪による気道炎症で気道が狭くなり、咳が止まりにくくなります。

おもな原因は、室内外の温度差やストレス、ハウスダスト、たばこ(受動喫煙含む)です。

また、長く続く咳は肺がんや結核などが隠れていたり、COPDが原因のこともあります。咳が長くと続くときは医師の診察を受けましょう。

 

まとめ

・気管支喘息は無症状でも吸入剤を指示どうりに使う。

・吸入ステロイドと長時間型β刺激剤の合剤が主流となり、使用早期から症状改善される。

・吸入ステロイドが上手に吸えない場合はスペーサーを使う。

・季節の変わり目は喘息発作が起こりやすい。

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1974年生まれ。2000年三重大学医学部卒業。三重県松阪市で内科クリニックを10年前からしています。診療所に併設して有料老人ホーム、認知症対応型グループホームもあり、自宅生活の方も含め在宅医療も行っています。 また、インスタグラムでフォロワー1万人超のアカウントを2つ運営するインスタグラマーでもあります。 地域のかかりつけ医として気軽になんでも相談してください。医療と介護の両面から一緒に考えます。
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