【不眠症治療のゴール】いつまで薬をのみ続ける?それともやめる?
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こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、
西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
患者さんの「眠れません」の訴えには様々な原因があります。
眠れないからといって眠剤を出せば終わりではありません。
前回は不眠症以外で眠りの質を下げる疾患を解説しました。
今回は不眠症治療におけるゴールについてです。
睡眠薬のタイプと量
睡眠薬と呼ばれるものは20種類弱あります。
それぞれ眠くなる仕組みや、効いている時間が異なるため、不眠症の症状に合わせて適切な薬を選び、適量を決められた時間に服用することが大切です。
高齢者では途中で目が覚めたり、早朝に目が覚めたりするような不眠が多くなります。
ある調査では(平均年齢72歳)、睡眠薬を飲んでいる患者さんの2/3は治療後も不眠症が改善していませんでした。
高齢者は薬の代謝が低く、転倒や認知機能障害のリスクが高いため、効いている時間が短い睡眠薬を選ぶお医者さんが多いせいかもしれません。
しかし、不眠症状が改善しないまま、睡眠薬を漫然と継続していると、重症化・慢性化する恐れもあります。
普通の量の睡眠薬を飲んでも眠れないからといって、単に睡眠薬の量を増やしたり、効いている時間が異なる睡眠薬を飲めばよいというものではありません。
睡眠薬を単純に上乗せしても必ずしも効果が高まるわけではありません。
効きが悪い時は異なる作用機序の薬を追加したほうがよく効きます。
治療が長引きやすいのは
高齢、飲酒習慣、抗うつ薬などの向精神薬を服用している、かゆみ・痛み・頻尿などの合併症、ストレスがあるなどの患者さんでは不眠症が長引きやすく、睡眠薬の服用期間も長くなりがちです。
そのような場合は、あらかじめ処方機関が長くなる可能性を考えて、依存、ふらつき・転倒・骨折、認知症の悪化のリスクが低い薬を使えないか検討します。
一般的に高齢者は睡眠薬の主流であるベンゾジアゼピン系睡眠薬の効果が強く出やすいです。
また、代謝の低下により血中濃度が高まりやすくなっています。
その結果、筋脱力や健忘などの副作用が生じやすく、特に高齢者では転倒や骨折のリスクが高まります。
最近ではより安全性の高い睡眠薬も開発されています。
実はベンゾジアゼピン系睡眠薬はLSDや大麻といった非合法薬物より有害性・依存性が強いと言われています。
ですので、私は新規に睡眠薬を処方する場合、ベンゾジアゼピン系睡眠薬をなるべく使いません。
いつまで睡眠薬を飲み続ける?
いくつかの研究によると、日本人は睡眠薬に関する不安がとても強いです。
マリリン・モンローもバルビツールの多量摂取で亡くなりました。
救急外来をしていると、ベンゾジアゼピン系睡眠薬を自殺目的で多量服用して運ばれてくる患者さんがいます。
しかしベンゾジアゼピン系睡眠薬では多量摂取しても死にません。
日本人が「不安を感じずに服用できる期間」は「1週間以内」が半数を占め、長期服用に対する拒否反応が強いです。
睡眠薬を怖がるあまり、決められた通りに飲まなかったり、自己判断でやめる患者さんも少なくありません。
そうすると逆に不眠症がなかなか良くならないということになりがちです。
大まかにでも医師と治療計画を相談しておくのもよいかと思います。
ただし、医師としても「いつまで睡眠薬を飲めばよいか」聞かれても簡単に答えられません。
最終的に患者さんとの話し合いでゴールを決めていきます。
日中の困りごとの例
- 昼間に眠くなる、疲れ、倦怠感
- 注意力・集中力・記憶力の低下
- 仕事や家事、勉強ができない
- 気分がすぐれない、イライラする
- 落ち着きがない、カッとなりやすい、攻撃的になる
- やる気・気力・自発性がなくなる
- 居眠り運転や作業中の事故
まとめ
- 睡眠薬を単純に増量しても必ずしも効果が高まるわけではない。
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬はLSDや大麻といった非合法薬物より有害性・依存性が強く、新規に睡眠薬を処方する場合、ベンゾジアゼピン系睡眠薬をなるべく控える。
- 不眠症治療のゴールを主治医と相談しておくことで、睡眠薬を続けるかやめるが決まる。
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