結核は過去の病気じゃありません。長引く咳や微熱に注意!
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こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、
西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
先日、私が嘱託産業医をしている会社から「職員が結核と診断されました。どうしましょう?」といった内容の相談を受けました。
結核は過去の病気と思われがちですが、実は日本では今でも患者さんが発生しています。
テレビなどで結核に罹って咳が続き、口から血痰が出るシーンがありますね。
沖田総司(新選組)、樋口一葉、石川啄木、正岡子規など、多くの人たちが結核で命を奪われています。
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結核とは
結核は、結核菌が体内の臓器などに感染し、増殖することで引き起こされます。
もっとも多くみられるのが、肺への感染(肺結核)です。
肺への感染の場合は、結核菌が増殖すると肺の組織に炎症が生じ、その範囲が次第に広がっていきます。
その過程で咳や痰が出るので、結核の早期発見には、この2つの症状が重要なサインとなります。
2週間以上続く咳や痰があれば、必ず結核は鑑別診断にいれておく必要があります。
結核に感染=発病ではありません
結核に感染しても必ず発病するわけではありません。
健康であれば、菌を吸い込んでも、人の体は免疫によって結核菌を抑え込んでしまいます。
その人の体力が低下したり、他の病気になって免疫機能が働かなくなるなどして抵抗力がおちると、抑え込まれていた結核菌が再び活動をはじめ、発病することがあります。
よくある発病のパターンは
- 戦後間もない結核が蔓延していた時期に感染するも免疫力で抑え込んでいたのが、高齢となり免疫力が低下して発症する。
- 若年では栄養が偏る、仕事が忙しく体力が低下しているなどの不規則な生活が続き免疫力が低下して発症。
といったパターンが多いです。
結核が進行するとどうなる
初期の症状(咳、痰、微熱など)を放置していると、肺の組織が次第に侵食されて空洞化が進み、呼吸機能がどんどん低下します。
また、結核菌がほかの臓器(腎臓、脊椎、腸など)に感染する場合もあります。
その結果、咳に加えて血痰や息苦しさ、強い倦怠感、体重の急激な減少など、さまざまな症状がみられるようになります。
さらに重症化すると、深刻な呼吸困難におちいったり、ほかの臓器が機能しなくなったりし、生命が危険な状態になります。
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結核はどうやって感染する?
結核菌は、人が「咳」をすることで空気中に撒き散らされ、空中でふわふわ浮いているのを他の人が吸い込むことによって感染する空気感染・飛沫感染という感染経路です。
触ったり、同じ食器を使うといった接触ではうつりません。
結核を発病したらどうなる
抗結核薬の服用が必要となります。
現在主流の治療は4剤併用療法で6ヶ月服用が平均的な治療です。
飲み忘れたりすると耐性結核を作り出すことがあるため、DOTSにより服薬継続を促します。
DOTSとは
DOTS(Directly Observed Treatment, Short-course:直接服薬確認治療)の略です。
患者さんが主治医から指示された治療を規則的に継続するために、入院・外来治療の全期間にわたって、主治医と保健所は連携して患者さんの受療を支援します。
具体的には医療者の目の前で患者さんに服薬してもらったり、退院後も継続的に治療に来られるよう、対策を考えたりします。
また、外来では保健所職員(主として保健師)が、患者さんや地域の状況に応じてさまざまな方法で服薬を確保します。
これは法律でも成文化されています。
引用:https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/tuberculosis/glossary/#anc24
喀痰中に結核菌を排出している場合
肺結核は空気感染が起こりうるため、排菌のある結核患者は感染症予防法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)により、負圧設備のある結核病棟への入院が義務づけられています。
排菌検査で3回続けて陰性になるまで退院できません。
結核病棟について
これまで書いたことはネットで調べれば出てくる内容です。
この先は実際に結核病棟に呼吸器内科医として出入りしていた時のお話です。
結核病棟は他の病棟から隔離されている
簡単に出入りできないように病棟の入口のドアに鍵があります。
病棟へ入る前にN95規格のマスクを付けないと入ってはいけません。
患者さんは売店へ買い物に行く事もできません。
N95マスク規格とは
結核病棟の中は3つに分けられている
ナースステーションと軽度排菌者の部屋と一番奥に多量排菌や多剤耐性結核といった重症患者の部屋の3つに分かれています。
特に重症患者の部屋への通路のドアには更に鍵がかけられており、出てこられないようにしてあります。
結核で亡くなる原因は?
結核で亡くなるのは弱っている高齢者がほとんど
ありがちなパターンは4種の抗結核薬を多量に(1回に8錠くらい)服用するため、薬の副作用による食欲不振から衰弱して亡くなるケースです。
抗結核薬を減量すると耐性結核の原因となりますし、薬を服用しなければ重症化して亡くなるので、どうやっても治らないというジレンマがあります。
一番困ったのは肺がんを合併した結核の高齢患者さんです。
抗がん剤と抗結核薬とで食欲不振を来して衰弱する。
抗がん剤と抗結核薬のどちらかを止めれば癌か結核のいずれかが進行してやっぱり衰弱する。
結核患者を診療していると危険手当がもらえる
危険手当といっても月2~3千円です。
多剤耐性結核にかかるリスクを考えたら全く割に合わない危険手当でした。
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まとめ
- 結核は過去の病気ではない。
- 結核に感染=発病ではない。但し感染すれば内服治療は必要。
- 結核を発病し排菌していると隔離のため結核病棟へ強制入院となる。
- 高齢で結核を発病すると予後が悪い。
BCGワクチンは必ず打っておかないといけません。
また、咳が長く続くときはお医者さんに診てもらってレントゲン撮影をしてもらいましょう。
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