がん検診や人間ドックで腫瘍マーカー検査を受けた方がいい?
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こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、
西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
先日、「腫瘍マーカーを健診のオプションで受けたら数値が高かったのですがどうしたらいいでしょうか?」
という質問を頂きました。
腫瘍マーカーとは
腫瘍マーカーは血液検査で行います。
このため、健診時の採血検体を用いて検査することができます。
腫瘍マーカーはがんの発生により普通ならそれほど変化しないはずの蛋白やホルモン、酵素などが急に増えるのを数値化したものです。
本来はこの数値を目安に治療方針を決定したり、治療効果を判断したりします。
腫瘍マーカーの種類は50種類以上あります。
例えば「CEA」という腫瘍マーカーは消化器系のがん、肺がん(腺がん)、子宮頸部扁平上皮がんなどで上昇します。
また、「PSA」という腫瘍マーカーは前立腺がんで上昇し、他のがんでは上昇しません。
腫瘍マーカーが異常値だからがんとは言えない
腫瘍マーカーは臓器の炎症などで一時的に上昇することもあります。
また、がんが無くても軽度上昇している人もいます。
例えば「CEA」は良性腫瘍のほかに長期喫煙・糖尿病・月経周期・妊娠・肺疾患・萎縮性胃炎・炎症性腸炎・加齢などで正常値を越える検査値が出ることがあります。
低いからといっても完全にはがんの疑いを否定できません。
そして早期がんでは腫瘍マーカーが上昇していないことがほとんどです。
ですので、腫瘍マーカーでがんの早期発見をすることには無理があります。
がんであっても腫瘍マーカーが増加するとも限らない
先ほど、「CEA」は色々ながんで上昇すると書きましたが、実際には進行がんになっても「CEA」は上昇していないこともあります。
その代わりに違う腫瘍マーカーが増加していることがあります。
ただ、前立腺がんの「PSA」や、卵巣がんの「CA125」、肝臓がんの「AFP」など、一部の腫瘍マーカーは、「早期がん」でも数値が上昇するため、がんの早期発見に活用できる可能性があります。
しかし、前立腺がんの「PSA」でさえも検診で行うことについては議論が分かれています。
PSA検診にその意義がないことを示した臨床試験もあります。
また、PSA検診によって助かった人がいても、それよりもはるかに多い人々に、偽陽性や過剰検査や過剰治療などの不利益が生じることがわかっており、世界的にも意見が分かれています。
腫瘍マーカーが高い場合は全身検索しないとわからない
勤務医時代には「腫瘍マーカーが高かったので、精密検査をお願いします」ということで検査入院する方を担当することが何回もありました。
特に全身の色々な臓器のがんで上昇する「CEA」が高いとなると全身の臓器検索をする必要性があります。
まず、全身CTと腹部エコーを行います。
次に上部・下部内視鏡検査を行います。
肺がんを疑う場合、CTで異常が無くても気管支内にがんがある可能性もあるため、気管支鏡検査をすることもあります。
もし、がんが見つかった場合、大抵は先ほども述べたように進行した状態です。
がん検診は腫瘍マーカーですべきではない
数千円のオプション費用を払って腫瘍マーカーを測定するより、各臓器別のがん検診を受ける方が早期がんの発見には有効です。
市などで補助が出るがん検診は「肺がん」、「胃がん」、「大腸がん」、「乳がん」、「子宮がん」、「前立腺がん」が受けられます。
それ以上調べるのであれば、PET-CTを(自費になりますが)することになると思います。
個人的には
市で補助が出るがん検診は受けた方がいいと思いますが、腫瘍マーカー検査は不要と考えます。
全身検査をして異常がなくても、数値が高いということで何となくスッキリしないまま過ごすことになります。
もちろん、がんの再発の早期発見やがん治療の効果判定で腫瘍マーカーを使うのは必要です。
腫瘍マーカー検査は採血だけでできる手軽な検査ですが、がん検診目的には向いていません。
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