週1回投与の糖尿病治療薬(トルリシティ、ザファテック、マリゼブ)
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糖尿病の基礎知識
糖尿病とはどんな病気かというと、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが何らかの原因で分泌不足になったり、インスリンの効きが悪くなった状態です。
その結果として、血液中のブドウ糖(血糖)が増えてしまっている病気です。
長期間にわたり血糖値が高い状態が続くと様々な臓器に合併症を引き起こしてきます。
糖尿病による合併症
脳:動脈硬化、脳梗塞、意識障害、認知症
目:網膜症、黄斑症、白内障、緑内障⇒失明となります
心臓:狭心症、心筋梗塞
腎:腎症、腎不全、尿毒症⇒人工透析が必要となります
がん:肝臓がん、膵臓がん、大腸がん(発症リスクが上昇します)
神経:末梢神経障害、筋力低下、知覚異常
足:閉塞性動脈硬化症、壊疽⇒切断となることもあります
このような合併症を防ぐために、良好な血糖コントロールを維持することが必要です。
服薬回数の増加は飲み忘れの増加と直結してます
良好な血糖コントロールを目指すため、様々な薬を使っていく事になります。
薬の中には敢えて毎食前に服用することで、食後血糖値の上昇を抑えることを期待する薬もあります。
また、朝食時に服用などと飲む時間が指定されている薬もあります。
その他にも薬によっては夜間低血糖が生じやすくなるため眠前服用は控えるべき薬など様々な注意が処方する側に求められます。
しかし、服薬時間や回数が多くなればなるほど患者さんがきちんと飲めなくなることは様々な調査にて判明しています。
それでもなぜそのような処方をするかというと、
- 指示どうり飲めば血糖コントロールの改善が見込まれるから。
- 患者さんがインスリンはどうしても嫌だから。
- そのような薬を使わないと血糖が下がりきらないから。
- 薬価が安く患者負担増を避けるため。
といったようなところです。
最近は週1回の糖尿病の内服薬や注射薬があります
但し、1種類だけで良好な血糖コントロールができるのは軽症の糖尿病で食事・運動療法も行っている方だけです。
週1回の薬を飲むだけで糖尿病が完全によくなることはありません。
それでも週1回の薬を使うことは飲み忘れを減らし、結果として血糖コントロールの改善に寄与します。
現在発売されている週1回の薬はDPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬の2種類しかありません。
週1回の注射薬:GLP-1受容体作動薬デュラグルチド(トルリシティ®)
GLP-1とは
食後の小腸から分泌されるインクレチンというホルモンの一種です。
空腹時には働かず、食後の血糖が高い時にのみ膵臓でインスリンを作らせて血糖を下げます。
このため低血糖が起こりにくいのが特徴です。
GLP-1は血糖値を下げる以外に消化管の運動抑制や食欲抑制などの効果もあり、体重減少も期待できます。
私も実際に使用して100㎏程の体重であった方が80㎏程に減り、非常に血糖コントロールが良くなった方もいます。(HbA1c 9~10だったのが現在6%前後です)
食欲が落ちて以前ほど食べられなくなったと診察時にぼやいています。
GLP-1受容体作動薬を使用した研究では、心血管疾患の発症を抑制した結果も出ています。
デュラグルチド(トルリシティ®)はこのGLP-1を薬にしたものです。
最近発売された週1回のGLP-1受容体作動薬の注射薬であるデュラグルチド(トルリシティ®)は基本的に患者さん本人が自分で打つ自己注射製剤です。
ただ、外来通院している高齢者の方の中には独居で打ってくれる人もいないなどの理由により週1回通院してもらい外来で打つこともあります。
打ち方は簡単で週に1回お腹に注射するだけです。
針もとても細く痛みも少ないです。
副作用として吐き気や下痢、便秘などの消化器症状が現れることがあります。
また、単独では低血糖が起こりにくいですが他の糖尿病治療薬と併用すると低血糖が生じる可能性があります。
商品名が「トルリシティ アテオス」です。
アテオスの名前の由来はその名の通り「あてておす」です…。
週1回の内服糖尿病治療薬
ザファテック(トレラグリプチン)
トレラグリプチンは、週1回の投与で優れた血糖降下作用を示すDPP4阻害薬です。
アログリプチン(商品名ネシーナ)など既存薬は毎日投与する必要があります。
週1回投与のDPP4阻害薬は本薬が世界初です。
24週間にわたる二重盲検比較試験(対象:非薬物療法で血糖コントロールが不十分な患者)で、トレラグリプチン(週1回投与)はアログリプチン(1日1回投与)と変わらないHbA1c低下作用が確認されています。
マリゼブ(オマリグリプチン)
オマリグリプチンは、肝臓での代謝をほとんど受けません。
さらに腎臓での受動的な再吸収機構により体内循環を繰り返すことで、週1回投与が可能となっています。
国内第3相試験において、週1回25mgで良好なHbA1c低下作用を示し、シタグリプチン(商品名ジャヌビア、グラクティブ)に対して非劣性が認められています。
但し、腎機能低下(eGFR<30mL/min/1.73m2)時には週1回12.5mgを目安に調節が必要です。
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