急に耳が聞こえない! 突発性難聴の検査と診断、治療予後について
スポンサーリンク
新年あけましておめでとうございます。
2019年最初のブログになります。
お正月に集まった際に知人が「2日前から急に片耳が聞こえない」と言ったので突発性難聴を疑い、耳鼻科の輪番診療所を受診してもらいました。
突発性難聴とは
「突発性」と書くぐらいなので、突然起こる難聴です。
「急に片方の耳が聞こえなくなり、詰まったような感じがする」とか「朝起きたら片方の耳が聞こえない」といった症状を訴え、耳鳴りを伴うこともあります。
ウイルス感染説や内耳循環障害説、肉体的・精神的ストレスも突発性難聴の引き金になると言われていますが、今でも突発性難聴の原因は不明です。
また、めまいも起こりません。
繰り返すめまいを難聴に合併した時は他の疾患(メニエール病など)を疑います。
スポンサーリンク
難聴の種類
突発性難聴は感音性難聴に分類されますが、難聴には障害の原因、部位によって、伝音性難聴・感音性難聴に大きく2つに分けられます。
伝音性と感音性難聴が混じると混合性難聴といいます。
また難聴が片方の耳か両方の耳かで一側性難聴と両側性難聴に分けることもあります。
伝音性難聴とは
上の図で外耳や中耳の部位で何らかの異常が起こり難聴を来した状態です。
外耳道炎、急性中耳炎などでは一時的な症状で済むことも多く、薬物投与などで改善することが多いです。
滲出性中耳炎、鼓膜穿孔(慢性中耳炎)や耳硬化症などでは手術をすることで改善することもあります。
手術での回復が難しい場合でも補聴器を使用すれば、問題なく聞こえることも多いです。
感音性難聴とは
感音性難聴は、内耳、蝸牛神経、脳の障害によって起こります。
突発性難聴以外に加齢性難聴や騒音性難聴、生まれつきの先天性難聴も感音性難聴になります。
補聴器で聞こえを補うことで、生活の質を改善させることができます。
スポンサーリンク
突発性難聴の検査と診断
検査
まず純音聴力検査を行います。
上の写真のヘッドホンを耳につけて音が聞こえたらスイッチを押す仕組みです。
125ヘルツ(低音)から8,000ヘルツ(高音)までの範囲を右耳と左耳に分けて検査します。
聴こえた最も小さい音の大きさ(数値)を調べます。
ヘッドホンから音を出す気導検査と、耳後部から音を伝える骨導検査があります。
気導と骨導の聴力に差があるものが伝音性難聴です。
気導と骨導がともに悪化しているもの(差がないもの)が感音性難聴です。
実際に音を聞いてみましょう。
診断
下記の診断基準を使います。
突発性難聴の診断基準は、主症状の全事項に該当した場合に突発性難聴と診断できます。
主症状 |
1.突然発症 |
2.高度感音難聴 |
3.原因不明 |
参考事項 |
1.難聴(純音聴力検査で隣り合う3周波数で各30dB以上の難聴が72時間以内に生じた) (1) 急性低音障害型感音難聴と診断される例を除外する (2) 他覚的聴力検査またはそれに相当する検査で機能性難聴を除外する (3) 即時的な難聴。目覚めて気付く難聴が多いが、数日かけて悪化する例もある (4) 難聴の改善・悪化の繰り返しはない (5) 一側性の場合が多いが、両側性に同時罹患する例もある |
2.耳鳴り 難聴の発生と前後して耳鳴を生ずることがある |
3.めまい、および吐気・嘔吐 難聴の発生と前後してめまい、および吐気・嘔吐を伴うことがあるが、めまい発作を繰り返すことはない |
4.第8脳神経以外に顕著な神経症状を伴うことはない |
スポンサーリンク
突発性難聴の治療
急性期の突発性難聴の治療として最も大事なのは安静です。
発症前に精神的、肉体的疲労感(ストレス)を感じていることが多いです。
心身ともに安静にして、ストレスを解消することは重要です。
安静を保つだけでも内耳循環障害の改善は期待され、治療しない場合でも聴力が回復する自然治癒があることも知られています。
難聴の程度によっては入院治療が望ましい場合もあります。
難聴の重症度
Grade1 | 40dB未満 |
Grade2 | 40dB以上、60dB未満 |
Grade3 | 60dB以上、90dB未満 |
Grade3 | 90dB以上 |
【注意事項】
1.純音聴力検査にて、0.25kHz・0.5kHz・1kHz・2kHz・4kHzの5つの閾値の平均とする。
2.この分類は発症後2週間までの症例に適用する。
3.初診時めまいが有る場合はaを、無い場合はbを付けて区分する
(例:Grade3a、Grade4b)
突発性難聴に対しては様々な治療法が検討されていますが、どのような治療法が最も有効かは未だ明らかではありません。
現時点では、可能性のある病態を考慮した治療法が行われています。
治療としては、内耳循環障害の改善や細胞の保護を目的としたプロスタグランジン薬と、ウィルス性内耳炎に対する抗炎症作用を有する薬(副腎皮質ステロイド)が併用され、治療の開始時期は、発症から2週間以内に行うのが良いとされています。
(1)内耳循環改善治療
内耳循環改善を目的とした治療としては、血管拡張薬を使います。
血栓によって内耳の循環障害が考えられる場合には抗凝固薬が使用されます。
その他、代謝の改善を目的とした薬や向神経ビタミン製剤が併用される場合もあります。
(2)ウィルス性内耳障害の治療
ウィルス感染に対する治療として用いられているのは副腎皮質ステロイドです。
副腎皮質ステロイドの抗炎症作用がウィルス性の内耳炎の症状を軽減させると考えられています。
投与の方法としては、一般的には内服や点滴で行います。
糖尿病や胃潰瘍、結核などの合併症を伴う場合にはステロイドの副作用でこれらの合併症が悪化する可能性があるため注意が必要です。
スポンサーリンク
突発性難聴の経過・予後
治療により治癒に至るのは全体の約40%、治癒には至らなくても何らかの改善を示す場合が約40%で、残りの約20%は難聴の改善が認められないと言われています。
突発性難聴は急性の疾患なので、治療は発生してから1~2週間以内に開始するのが望ましいです。
聴力が固定するのが2~3ヵ月とされているため、発症してから2~3ヵ月以内は薬物療法の他、星状神経節ブロック、高圧酸素療法などが行われます。
それ以降は一般的に難聴の回復は期待できず、耳鳴りなどに対する対症療法が行われます。
再発はほとんどありませんが、予後が悪くなる因子としては以下のようなものがあります。
- 発症してから2週間以上が経過した場合
- 発症した時の聴力の平均レベルが90dB以上の高度な難聴の場合
- 回転性めまいを伴う場合
- 高齢者の場合
スポンサーリンク
まとめ
- 突然難聴が起こったら速やかに耳鼻科を受診しましょう。
- 突発性難聴と診断されたら安静が第一です。
- 治療はステロイドや循環改善薬、ビタミン剤などを使います。
- 早期治療介入するほど予後は良いですが、難聴が残ることもあります。
スポンサーリンク