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年末が来ると思い出します。

 
この記事を書いている人 - WRITER -
1974年生まれ。2000年三重大学医学部卒業。三重県松阪市で内科クリニックを10年前からしています。診療所に併設して有料老人ホーム、認知症対応型グループホームもあり、自宅生活の方も含め在宅医療も行っています。 また、インスタグラムでフォロワー1万人超のアカウントを2つ運営するインスタグラマーでもあります。 地域のかかりつけ医として気軽になんでも相談してください。医療と介護の両面から一緒に考えます。
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今年も今日を含めて後二日となりました。年末が来ると毎年思い出すのが研修医2年目の大晦日のことです。

当時松阪市民病院の研修医として働いていましたが、研修医は私と同期の先生と2人だけしかいませんでした。当時も今も松阪市の年末年始の救急当番は12月29日から1月3日までの6日間を松阪中央病院・済生会松阪総合病院・松阪市民病院の3病院で輪番制となっています。30日の夜からの当番医となり、上級医の先生と二人で次々とやって来るインフルエンザなどの1次救急と押し寄せる救急車をさばきながら明け方を迎えた頃にやって来た腹痛患者さん。カルテを見ると前日の日勤帯にも市民病院の救急外来へ来て薬を処方されて帰っています。もう一度来るのですからおそらくかなり痛みが強いと思われ、レントゲン等を行い上級医が腸閉塞が疑われるので胃へ減圧チューブを鼻から留置して病棟へ送って入院させ、夜間の救急の時間も終了ということになりました。

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そこで鼻から減圧チューブを留置するため挿入していったところ、突然心肺停止を来しました。普通、チューブを留置しただけで心肺停止を来すなんてあり得ません。訳が分からないまま3時間位救命処置を行いましたが、残念ながら救命することは出来ませんでした。そこで死因究明のため病理解剖を御家族に提案したところ承諾をいただき、そこから病理の先生を電話で(休み中ですが)呼び出して解剖することになりました。この時点で昨夜から一睡もせず働いて結構フラフラです。昼食を食べた頃に病理の先生が来られて解剖開始です。

死んだ直後の人間の解剖は内臓にはまだ温かさが残っています。匂いも独特に臭気がありますがそんなことを気にしていては出来ません。開胸し、各種臓器を取り出し、重さを測り、胃や腸はハサミで切り開き内部が見えるようにして洗ってホルマリンへと浸けていきます。そうして判明した死因は腹部大動脈解離でした。大動脈解離と言えば最近はアニメのアンパンマンのドキンちゃんの声優さんの鶴ひろみさんもこの病気で突然亡くなりましたね。

大動脈解離は大動脈という太い血管の壁が内外に避けた状態の事を言います。
この時点ではまだ血管の外へは避けていません。大動脈壁の内側の膜に亀裂ができ、これが穴のようになって内膜裂孔(エントリー)と呼ばれます。内側と外側の膜の間に血液が流れ込んだ結果、それが新たな腔つまり偽腔となります。元の大動脈腔つまり真腔とあわせて二腔の構造となります。そしてこの偽腔が破れてしまい、大出血を引き起こす状態です。致死率も50%程度と予後の悪い疾患です。

この時は腹痛の原因は動脈が裂ける痛みで、チューブを留置したときに血圧が上がって、大動脈へ更に圧がかかりそれにより動脈が更に裂けたため亡くなったのでしょう。

さて、結局家に帰れたのは夕方5時頃だったでしょうか。まだ20代半ばで体力もありましたが、それでも徹夜とストレスでフラフラだったのはよく覚えています。当直明けの大晦日はのんびりしようと思っていたのが見事に裏切られました。また、激しい腹痛には何が隠れているか分からないので要注意ということも身をもって学びました。あれから十数年経ちましたが、年末になると必ず思い出します。

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