三重県松阪市の医療と介護の専門家 

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BCGワクチンを新型コロナウイルス感染予防に使ってはいけない理由

 
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1974年生まれ。2000年三重大学医学部卒業。三重県松阪市で内科クリニックを10年前からしています。診療所に併設して有料老人ホーム、認知症対応型グループホームもあり、自宅生活の方も含め在宅医療も行っています。 また、インスタグラムでフォロワー1万人超のアカウントを2つ運営するインスタグラマーでもあります。 地域のかかりつけ医として気軽になんでも相談してください。医療と介護の両面から一緒に考えます。
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こんにちは!

三重県松阪市の医療と介護の専門家、

西井医院の院長(  @nishii.hospital)です。

 

世界的に新型コロナウイルス感染症の拡大が続いています。

疫学的に、日本をはじめ、BCGワクチンを幼少期に接種した国では、新型コロナウイルス感染症の患者数や重症者数が少ないことが指摘されています。

オーストラリアなどでは、BCGの有用性を検証する治験をスタートさせています。

院長
日本でも一般に新型コロナウイルス感染症による重症化のリスクが高く、BCGワクチンの接種歴がない高齢者の一部の方が接種しているらしいです。

 

BCGワクチンを新型コロナウイルス予防でなぜ使うべきではないか

日本ワクチン学会の見解

1. 「新型コロナウイルスによる感染症に対して BCG ワクチンが有効ではないか」という仮説は、いまだその真偽が科学的に確認されたものではなく、現時点では否定も肯定も、もちろん推奨もされない。

 

2.  BCG ワクチン接種の効能・効果は「結核予防」であり、新型コロナウイルス感染症の発症および重症化の予防を目的とはしていない。

また、主たる対象は乳幼児であり、高齢者への接種に関わる知見は十分とは言えない。

 

3. 本来の適応と対象に合致しない接種が増大する結果、定期接種としての乳児へのBCG ワクチンの安定供給が影響を受ける事態は避けなければならない。

 

BCGワクチンの供給量には限りがある

BCG ワクチンは、結核に対する予防ワクチンです。

日本では小児に対して予防接種法に基づく定期接種が実施されています。

定期接種の対象者は0歳児であり、結核性髄膜炎(けっかくせいずいまくえん)や粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)など低年齢小児で頻度の高い重症の結核を予防する有用性が最も高いという理由に基づいています。

乳児がBCGワクチンを接種できずに結核に感染することは避けなくてはいけません。

院長
高齢者がBCGワクチンを接種しなくてもよいのは、過去に結核が蔓延していた時代に自然感染して免疫を獲得しているからです。

 

日本結核・非結核性抗酸菌症学会の見解

1. 新型コロナウイルスの感染あるいは感染症の重症化抑制に BCG ワクチンが有効であるか否かについては、科学的証明がまだない。

従って、現時点では、新型コロナウイルス感染症対策を目的とした使用は推奨できない。

2. BCG 菌は有効性が明らかである結核予防のための乳幼児へ BCG ワクチン及び膀胱がんに罹患している人への治療製剤のために製剤への使用が優先されるべきである。

ワクチンの性質から急な増産は不可能であり、それ以外の目的に供給できる量は極めて限られている。

3. BCG は生ワクチンであるため、高齢者、免疫力の乏しい易感染者に接種することで、BCG自体による全身性感染症を含む、重篤な副反応が生じる事例がある

 

4. BCG ワクチンは結核既感染者に接種すると、接種部位に著しい発赤や潰瘍を生じることがある(コッホ現象)。

日本の 80 歳前後の年代では 3 分の1程度が結核既感染者と推定されることが多い。

 

なぜBCGワクチンが新型コロナウイルス感染症の重症化予防があるといわれたか

 

  1. BCGワクチンが新型コロナに対する免疫系を賦活化させると推察されること
  2. BCGワクチンの国別推奨度の世界地図と、新型コロナ感染率との相関
  3. BCGワクチンのうち日本/ロシア/ブラジル株がコロナ感染に有効性が高そうであること
  4. 日本とポルトガルでは、BCGワクチン接種が強制されていなかった高齢者に感染率が高いこと

 

1981年にBCGワクチン全例接種を中止しているスペインでは、新型コロナウイルス感染症の感染者数が7万8797人、死亡者数が6528名と甚大な被害が出ている一方、BCGワクチンの全例接種を実施している隣国ポルトガルでは、感染者数が6528名、死亡者数が119名にとどまっています(3月30日時点)。

院長
BCGワクチンが先天性免疫応答を調節し、結核以外のウイルス感染から防御する作用を持つ可能性があることはわかっています。

 

BCGワクチンを全例接種する国、しない国

結核を予防するBCGワクチンは、1940年代以降、世界各地で普及しました。

日本でも、1949年にBCGワクチンによる結核予防接種が法制化されました。

2011年3月時点の調査結果によると、180カ国のうち日本を含めた157カ国でBCGワクチンの全例接種が行われています。

しかし、結核罹患率の減少に伴い、1980年代以降、スペイン、フランス、ドイツ、英国、オーストリアなどの欧州9カ国、オーストラリア、ニュージーランドで全例接種が中止されました。

米国やカナダ、イタリア、オランダでは、医療従事者などのハイリスク群のみに接種を限定する選択的接種となっています。

 

最後に

すでにBCGワクチンに出荷制限がかかっています。

新型コロナウイルス感染が怖いのは分かりますが、まずは乳児へのBCGワクチン接種が必要です

大人がBCGワクチン接種のために病院に駆け込んで、本来BCGワクチンを接種すべき子どもたちのBCGワクチンが足りなくなることだけはあってはならないことです。

 

また、BCGワクチンは普通の注射器では接種できません!

専用の細い9本の針を刺す“ハンコ注射”です。

小児科以外の打ち慣れていない医師が接種すると失敗する可能性があります。

 

大多数の大人はBCGワクチンを子供の時に接種済みです。

手洗い、咳エチケット、そして3密を避けるといった感染予防の原則を徹底するようにしましょう!

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1974年生まれ。2000年三重大学医学部卒業。三重県松阪市で内科クリニックを10年前からしています。診療所に併設して有料老人ホーム、認知症対応型グループホームもあり、自宅生活の方も含め在宅医療も行っています。 また、インスタグラムでフォロワー1万人超のアカウントを2つ運営するインスタグラマーでもあります。 地域のかかりつけ医として気軽になんでも相談してください。医療と介護の両面から一緒に考えます。
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