薬剤誘発性認知症について
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眠剤を使うとボケる?
「眠剤を使うとボケる」ということを聞いたことがあるかと思います。
医師の視点から言えば半分正解、半分間違いです。
認知機能に作用する薬を使うと(特に高齢者では)認知症様症状が出ることがあります。
中止すれば改善しますが、長期に服用すると(その間に元々の認知症が進んでしまうので)改善しないように見えます。
厚生労働省も睡眠薬や抗精神病薬の多剤併用は問題視していて、医師が睡眠薬や坑精神病薬を多剤処方すると処方箋料を下げるなどの措置を行っています。
薬剤誘発性認知症の原因となる薬
基本的にはほとんど全ての薬が認知障害の原因となりえますが、特に来しやすいものを挙げると、
1.抗コリン作用を持つ薬。
抗コリン薬は、神経伝達物質のアセチルコリンがアセチルコリン受容体に結合するのを阻害します。(認知症薬のアリセプトなどの逆の効果があるということです。)
抗コリン薬は、(アセチルコリン作動性神経により、胃や気管支、膀胱などの平滑筋は収縮するので、)胃痙攣を抑える目的で使用されたり、気管支拡張剤として、また過活動性膀胱の治療薬として使用されます。
パーキンソン症候群の補助的な治療薬として、使用されることもあります。
その一方で、鼻水や痒みを止める抗ヒスタミン剤や、抗うつ剤や抗精神薬は、副作用としての抗コリン作用を持っています。
この抗コリン作用は基本的に末梢神経のものですが、脳への作用も皆無ではありません。
2.ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬
ハルシオンやデパスが有名です。
特にこの2薬は健忘や依存のリスクが高いことが指摘されています。
また、長期に使用すると認知症のリスクが高くなるとの研究結果が出ています。
不眠などで屯用ならば問題ないですが、長期使用は控えたほうがよい薬です。
3.抗精神病薬
抗精神病薬は、統合失調症や双極性障害に使います。
精神科で処方されることが多いですが、重度の認知症で他者への危害が予想される時にも使われることもあります。
4.抗パーキンソン病薬
パーキンソン病自体が進行とともに、幻視や認知症を高頻度に生じるため薬剤誘発性認知症と鑑別することが難しいです。
パーキンソン病を持っていない方への抗パーキンソン病薬の使用は止むを得ない場合を除き控えるべきです。
5.抗うつ薬
最近では使用量が減っていますが、三環系抗うつ薬は抗コリン作用をもっています。
但し、処方されているからと言って勝手に止めると反動症状が出ます。主治医と要相談が必要です。
6.抗てんかん薬
古い抗てんかん薬のフェニトイン、プリミドン、フェノバルビタールでは重度の認知機能障害や生じやすいですが、最近の新規抗てんかん薬では少ないです。
7.H2受容体拮抗薬
胃薬として最近はドラッグストアでも売られています。
抗コリン作用をもち、高齢者や腎機能低下者ではせん妄を来す可能性があります。
8.過活動膀胱の治療薬
過活動膀胱とは夜間の頻尿や急な尿意が我慢しきれないといった症状です。
高齢者に多い症状で抗コリン薬(ムスカリン受容体拮抗薬)がよく使われてます。
ただし、中枢神経系の副作用を来す可能性があります。
9.非ステロイド抗炎症薬
アスピリン、イブプロフェン、インドメタシン、スリンダクといった市販薬の成分でも認知機能障害が報告されています。
10.循環器系治療薬
ジゴキシンではジギタリス中毒によりせん妄や失見当識などの認知機能障害を来たすことがあります。
βブロッカーは最近心不全治療でよく用いられますが、うつ状態、鎮静、疲労感、幻覚、せん妄、不安などの精神症状を惹起することがあります。
11.副腎皮質ステロイド
用量依存性に認知機能障害やうつ症状のリスクが高まります。
いずれの薬も自己判断で中止することは持病の増悪を招くこともあり危険です。
必ず主治医と相談の上で中止・減量が必要です。
主治医に聞きにくい場合は他の医師に相談するのもよいでしょう。
第3者の視点から見ることで漫然と処方されている薬を減らすことができるかもしれません。
当院では主治医に相談しにくい薬や治療法のセカンドオピニオンもしております。
気になる場合はお気軽に相談ください。なるべく予約をしていただくと助かります。
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