COPD治療の第一歩は禁煙。タバコを減らしてもよくなりません。
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こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
COPDがどんな病気かは以前のブログ記事で紹介しました。
【COPD(慢性閉塞性肺疾患)を知ってますか?COPDの症状と検査】
今回はCOPDの治療についてです。
COPDの治療はまず禁煙
肺機能は加齢と共に低下していきます。
しかしCOPDになると肺機能の低下するペースが早くなります。
喫煙を中止しても肺機能は回復しません。
あくまでも肺機能の低下ペースが健常人と同じになるだけです。
ですが、喫煙を続ける限りどんどん肺機能は悪くなります。
このため「COPDの治療はまず禁煙」となります。
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禁煙と同時に気管支拡張薬の吸入が必要
大事なのはどれを使うかではなく、きちんと吸えることです。
ちゃんと吸うことができればどの薬も効果があります。
そこで私が薬を選ぶ際の目安として以下の表にあるような感じで使い分けています。
- 理解力と記憶力の低下のある患者さん
吸い忘れ・服用方法の間違い・重複服用の恐れがある。
→簡便な操作・服用回数の少ないタイプが良い。(例:1日1回型のエリプタ)
- 視力の低下(老眼、白内障)のある患者さん
説明書の字、カウンターが読めない可能性あり。
→大きな説明書を用意する。大きな残量カウンターがベター。
(例:タービュヘイラーは視覚的に残量に色がついているので見やすいかもしれません)
- 手指の震え・力が弱いような患者さん
吸入器の固定や力を入れて押せない、容器を回せない。
→エアゾール剤は固定したり、押す力が必要。メーカーが提供している補助器具を使う。
- 吸入力が弱っている患者さん
吸い残し、口腔ガンジダ等副作用や、効果が不十分になる。
→吸気流速を考えたデバイスがベター(エアゾール等)。また、トレーナーを準備する。
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呼吸リハビリテーションも効果的です
薬を吸えば呼吸は楽にはなりますが、呼吸をするための筋肉も鍛える必要があります。
息苦しさや息切れを覚えるようになると、体を動かすこと自体が億劫になり家に引きこもりがちになります。
その結果、動かさなくなった体の筋力が衰えて足腰が弱り、ますます外出や運動を控えるといった悪循環に陥ります。
COPDは体全体の機能低下につながる可能性が高い病気です。
呼吸リハビリテーションとは、そうした負のスパイラルを断ち切り、健康を維持するために呼吸器の運動機能を向上・改善させるために必要です。
COPDと栄養
COPD治療に栄養が重要な理由
呼吸は呼吸筋を動かして行いますが、COPDになると悪くなった肺をカバーするために呼吸筋を一生懸命動かそうとします。
そうなると健康な人より呼吸にたくさんのエネルギーが必要となります。
ところが、多くの方は息切れによって食欲が落ちてしまいます。
その結果必要なエネルギーを摂りにくくなり、ますます体力や筋力が落ちて、息切れが強くなるという悪循環に陥りやすくなります。
COPD患者さんにやせ型の人が多いのは、このように十分な栄養およびエネルギーが必要なのに不足してしまう状態にあるからです。
COPDの食事のポイント
- 栄養バランスの良い食事にするために「主食+主菜+副菜+果物/牛乳」を心がけましょう。
- 1日30種類ぐらいの食品をバランス良く摂るようにしましょう。
- 高エネルギー、高たんぱくの食事にしましょう。
※ ただし、糖尿病、肥満、腎臓病、高脂血症などで、特別な食事療法の必要のある方は、主治医とよく相談してください。
- 体のエネルギー源として、1日に2,000~2,300kcalが必要です(これは20~30代の青年期に必要な量に相当するのでかなり効率的に栄養を摂らないとクリアできません。)
少量で効率的よく栄養を補給するために呼吸器疾患の方向けの栄養補助食品もあります。
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COPDに漢方薬を使うこともあります
COPDの治療は禁煙、次に気管支拡張薬ですが、補助的に漢方薬を使う場合もあります。
COPDに漢方薬を使うのは、全身状態を整えて体力をつけるのが目的です。
COPDの治療に用いられる主な漢方薬
- 清肺湯(せいはいとう):痰を伴う咳、慢性気管支炎
- 八味地黄丸(はちみじおうがん):手足の冷え、夜間尿
- 麦門冬湯(ばくもんどうとう):痰が絡む咳、喉の乾燥感
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう):食欲低下、全身に活気がない、食事の味がしない、時々微熱が出る
- 小建中湯(しょうけんちゅうとう):食欲不振、疲れやすい、腹痛
- 竹如温胆湯(ちくじょうんたんとう):弱弱しい咳、痰が切れにくい、食欲不振、倦怠感、冷え、不眠・うつ傾向
- 茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう):顔色が悪い、手足の冷え、疲れやすい、歩くとふらつく、食欲低下、気力低下(※エキス剤では真武湯と人参湯を混ぜたものです)
清肺湯は「ダスモック」という名前で売られています。
重度のCOPDになると在宅酸素療法が必要となります
故桂歌丸師匠が酸素を吸いながら高座に上がっていたのを覚えている方も多いと思います。
COPDにより肺機能の低下が進むと、普通の呼吸では十分に酸素を取り込めなくなりません。
低酸素血症となり、呼吸不全という症状に陥ります。
家庭で持続的に酸素を吸入する在宅酸素療法を行うことで、患者さんのQOLが向上し、生存率が高まります。
但し、酸素療法を行うには患者と家族が酸素療法の目的、意義、必要性を理解していないとできません。
ワクチン接種も大事です
インフルエンザや肺炎によりCOPDの状態が急に悪くなることがあります。
インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種しておき予防することは大事です。
まとめ
- COPDの治療はまず禁煙。
- 気管支拡張薬は1回の呼吸で吸える空気の量を増やす効果があります。
- 呼吸器リハビリは呼吸器の運動機能を向上・改善します。
- COPDの栄養療法では十分な栄養およびエネルギーが必要。
- 全身状態を整えて体力をつけるのが目的で漢方薬を使うこともあります。
- 重度のCOPDでは在宅酸素療法が必要となります。
- インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンも接種しておきましょう。
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