ネコやイヌへのマダニ付着と重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
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こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
昨夜のNHKの〈クローズアップ現代+〉を見ていたらネコへのマダニ付着が増えているとの放送でした。
マダニに刺されると怖いのは重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を発症することがあるからです。
マダニが近所の公園にもいる理由
これまでは山の中にしかいなかったマダニが都会の人里でも咬まれるようになったのは、タヌキやハクビシン、アライグマといった野生動物が山から降りてきて人里でも生活するようになったからです。
そしてマダニも一緒に人里へ連れてきたからです。
そこへ草むらを歩き回る野良猫や地域猫、飼い猫にくっつき家の中へ持ち込んだり咬まれたりすることで感染します。
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マダニに吸血されてしまったら
マダニに吸血された場合には、皮膚科などを受診してマダニを除去してもらって下さい。
マダニ類の多くは、ヒトや動物に取り付くと、皮膚にしっかりと口器を突き刺し、長時間(数日から、長いものは10日間以上)吸血します。
咬まれたことに気がつかない場合も多いと言われています。
吸血中のマダニに気が付いた際、無理に引き抜こうとするとマダニの一部が皮膚内に残って化膿したり、マダニの体液を逆流させてしまったりする恐れがあります。
医療機関(皮膚科など)で処置(マダニの除去、洗浄など)をしてもらってください。
また、マダニに咬まれた後、数週間程度は体調の変化に注意をし、発熱等の症状が認められた場合は医療機関で診察を受けて下さい。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは
国立感染症研究所によるとSFTSは2011年に中国の研究者らによって発表されたブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新しいウイルスによるダニ媒介性感染症です。
2013年1月に国内で海外渡航歴のない方がSFTSに罹患していたことが初めて報告され、それ以降他にもSFTS患者が確認されるようになりました。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の症状
SFTSウイルス(SFTSV)に感染すると6日〜2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が多くの症例で認められ、その他頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを起こします。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の検査所見
検査所見上は白血球減少、血小板減少、AST・ALT・LDHといった肝機能の血清逸脱酵素の上昇が多くの症例で認められます。
血清フェリチンの上昇や骨髄での血球貪食像も認められることがあります。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の予後
致死率は6.3〜30%と報告されています。
感染経路はマダニ(フタトゲチマダニなど)を介したものが中心ですが、血液等の患者体液との接触により人から人への感染も報告されています。
治療は対症的な方法しかなく、有効な薬剤やワクチンはありません。
三重県でも既に何例も届け出があります。
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マダニの予防方法
SFTSは有効な治療法が無いため咬まれないように予防することが大事です。
これは、SFTSだけではなく、国内で毎年多くの報告例がある、つつが虫病や日本紅斑熱など、ダニが媒介する他の疾患の予防のためにも有効です。
特にマダニの活動が盛んな春から秋にかけては、マダニに咬まれる危険性が高まります。
草むらや藪など、マダニが多く生息する場所に入る場合には、
- 長袖・長ズボン(シャツの裾はズボンの中に、ズボンの裾は靴下や長靴の中に入れる、または登山用スパッツを着用する)
- 足を完全に覆う靴(サンダル等は避ける)
- 帽子、手袋を着用
- 首にタオルを巻く
などの肌の露出を少なくすることが大事です。
服は、明るい色のもの(マダニを目視で確認しやすい)がお薦めです。
DEET(ディート)という成分を含む虫除け剤の中には服の上から用いるタイプがあり、補助的な効果があると言われています。
また、屋外活動後は入浴し、マダニに刺されていないか確認して下さい。
特に、首、耳、わきの下、足の付け根、手首、膝の裏などがポイントです。
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ペットのマダニ予防策
ペットの予防策としては、散歩から帰った際には、人間・ペットともにマダニに咬まれていないかチェックしましょう。
ペットの場合、被毛の薄い目・鼻・耳・指の間などを重点的に観察してください。
もしも咬まれていた場合は無理に引き抜こうとせず、皮膚科医・獣医師の診察を受けましょう。
ペットにマダニが寄生するのを防ぐために動物病院でネクスガード、フロントライン プラスなどの適切な駆除薬を処方してもらい定期投与を行いましょう。
あらかじめネクスガード、フロントラインプラスを投与しておけば、マダニが付着しても48時間以内に概ね死んでしまいます。(※マダニの付着自体を防ぐことはできません)
屋内で飼育している動物がSFTSにかかるリスクは低いですが、他の感染症を避けるためにも、口移しで餌を与えたり布団に入れて寝たりなどは控えた方がよいです。
また、野生動物との接触や、SFTSの症状が出ているペットとの濃厚な接触は避けましょう。
参考:厚生労働省による重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A
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