三重県松阪市の医療と介護の専門家 

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GLP-1ダイエット注射・内服薬の種類と効果(ビクトーザ・トルリシティ・リベルサス)

 
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1974年生まれ。2000年三重大学医学部卒業。三重県松阪市で内科クリニックを10年前からしています。診療所に併設して有料老人ホーム、認知症対応型グループホームもあり、自宅生活の方も含め在宅医療も行っています。 また、インスタグラムでフォロワー1万人超のアカウントを2つ運営するインスタグラマーでもあります。 地域のかかりつけ医として気軽になんでも相談してください。医療と介護の両面から一緒に考えます。
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こんにちは!

三重県松阪市の医療と介護の専門家、

西井医院の院長(  @nishii.hospital)です。

 

「意志力いらず・リバウンドしづらい・ダイエットで悩まない・我慢をしないダイエット・心身共に負担が少ない」

これらはGLP-1ダイエットを検索すると広告に出てくる文です。

当院では肥満外来の治療の一環としてGLP-1注射を使ったダイエットを(自費診療ですが)行っています。

最近注射するだけで痩せると話題になっている「GLP-1ダイエット注射」ですが、「GLP-1って何?」という人がほとんどだと思います。

 

GLP-1注射(ダイエット注射)は6種類もある!

またGLP-1注射といっても実は6種類もあります

よく知らずにただ「痩せる」といううたい文句にのせられて注射をしても副作用で続けられないこともあります。

現在使用されているGLP-1注射について解説します。

 

GLP-1注射で痩せる理由

GLP-1受容体作動薬は、(ある意味副作用ですが)食物胃排出遅延、中枢性食欲抑制等による血糖改善および減量効果が期待されています

院長
GLP-1注射の減量効果はBMIが25以上ないと効果が出にくいです。

GLP-1による胃内容物排出遅延効果

 

これを利用したのがGLP-1ダイエットです。

食欲抑制効果により食欲を我慢するストレスから解放されます

またGLP-1の効果で味覚が変化し、ジャンクフードが苦手となり健康的なものを好むようになります。

GLP-1は食欲を抑制する

 

GLP-1とは

食事をとると小腸などから分泌され、膵臓を刺激してインスリンの分泌を促すホルモンであるインクレチンにはGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の2種類があります。

GLP-1は食事による血糖上昇に応じて、膵β細胞のインスリン分泌を促進する一方、血糖上昇作用のあるグルカゴン分泌を抑制します。

また胃内容物排出を遅くし、かつ中枢性に過食を防ぐ作用もあります。

GLP-1の多彩な生理作用

 

GLP-1受容体作動薬とは

人間の体内ではGLP-1はDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)により半減期1~2分ほどの早さで分解され、効果はすぐ失われます。

そこでGLP-1の構造を分解されにくいように変えたのが、GLP-1受容体作動薬という注射薬です。

 

高血糖の時のみ膵臓に作用してインスリンを分泌させ、血糖値を低下させます。

このため、単独使用では低血糖が起こりにくいです。

GLP-1のインスリン分泌促進作用

 

院長
アメリカドクトカゲの唾液の毒素からGLP-1受容体作動薬のオリジナルは発見されたんですよ!

市販薬はちゃんと合成されているものですから安心してください。

アメリカドクトカゲ

 

現在では7種類が発売されています。

短時間作用型と長時間作用型の2タイプがあり、それぞれメリット・デメリットがあります。

 

GLP-1受容体作動薬の種類

1.エキセナチド(バイエッタⓇ):短時間作用型

世界で最初に開発されました。

2005年に米国で発売、内外の糖尿病学会でも大きな話題になりました。日本は2010年です。

バイエッタⓇは1日2回朝夕食前にペン型注射器で1回5μgを注射し、1カ月以上後に1回10μgに増量します。

悪心・嘔吐、食欲減退、便秘などの副作用は他のGLP-1受容体作動薬と同様です。

本剤は胃からの排泄抑制作用が強く、使用してみると食欲が抑制され、これが本剤の効果とも言えます。

薬価は1本10069円です。

 

2.リキシセナチド(リキスミアⓇ):短時間作用型

半減期は2.1~2.5時間程度で、1日1回10μgから開始し、各1週間以上投与後に15μg、20μgと増量します。

薬価は1本6562円です。

 

3.リラグルチド(ビクトーザⓇ):長時間作用型

注射量を0.3,0.6, 0.9mgと段階的に増やすので、副作用を訴える症例はほとんどない製剤です。

1日1回注射します。

体重抑制はエキセナチド(バイエッタⓇ1日2回製剤)に比較して弱い傾向にあります。

罹病期間の短い症例でのHbA1c改善効果は良好です。

ビクトーザⓇはバイエッタⓇの半減期1.3~1.4時間に比べたら13~15時間と長いですが、それでも1日1回の注射が必要です。

薬価は1本10435円です。

院長
世界では1.8mgまで使用できます。日本の保険診療では0.9mgと抑えられていましたが、2019年の改定で1.8mgまで使用可能となり、世界基準と同じ容量で使えます。

実診療ではインスリンや飲み薬と併用することが多いです。

 

一部の美容クリニックでは一日1.8mgより多く(最大3mg)まで投与している所を見かけます。

ここまで多量に必要な場合は、糖質依存に陥っている可能性があります。

注射だけでなく、糖質依存の対策をしないとビクトーザを中止後かなりの割合でリバウンドします。

サクセンダとビクトーザの違い

 

両者の大きな違いは1回の最大投与量が異なるという点です。
サクセンダもビクトーザも同じデンマークのノボノバルティス社の「リラグルチド」という成分の名前を変えた薬剤です。

もともとサクセンダは肥満症のお薬、ビクトーザは糖尿病用のお薬として発売されました。

両方とも、総容量は18mgと同じですがサクセンダは目盛りが「0.6」「1.2」「1.8」「2.4」「3.0」の5段階あります。
ビクトーザの目盛りは「0.3」「0.6」「0.9」「1.2」「1.5」「1.8」の6段階に設定されています。
サクセンダは1回あたりの投与量が目盛りで最大「3.0」まで可能ですが、ビクトーザは目盛り最大「1.8」までとなります。
1回の投与量を多い程、血中の濃度が上がった状態が長く続き、食欲が抑制されます。
つまり、より食欲を抑制したい方はサクセンダ、より細かく、用量を調節したい方はビクトーザとなります。

ただし、サクセンダは日本では発売されておりません。

美容クリニックで扱っているサクセンダは個人輸入されています。

院長
院長
当院ではサクセンダの取り扱いはしていません。

 

4.エキセナチド(ビデュリオンⓇ):長時間作用型(販売中止)

週1回製剤で、1番目に紹介したバイエッタ®の成分であるエキセナチドが「マイクロスフェア」という合成高分子微粒子に包埋されたものです。

マイクロスフェアは直径0.06mm、髪の毛の断面ほどの球体で、水と二酸化炭素に分解されながら1週間以上の長期にわたり薬物を放出します。

注射後の皮下硬結例も散見されますが、2~3週間で消失します。

注射針は他剤より太いですが、食欲抑制効果は強いです。

薬価は1本3647円です。

 

院長
院長
諸般の事情によりビデュリオンは2022年5月で販売中止となります。

このため当院でも在庫限りにて販売を終了させていただきます。

 

5.デュラグルチド(トルリシティアテオスⓇ):長時間作用型

週1回製剤ですが、デバイス「アテオス」は名前の通り「キャップを外し皮膚に当てて押す」だけの簡単なものです。

デバイスにバネがセットされ注入が容易になっている点が優れています。

週1回製剤としては後で発売されましたが、注射の容易さから当院での(糖尿病患者さんの)使用率は伸びています。

薬価は1本3419円です。

 

院長
各製剤の薬価はあくまで保険診療における薬価です。

保険診療でも針や酒精綿などを合わせた管理料も発生します。

 

6.セマグルチド(オゼンピック®):長時間作用型

発売が延期となっていましたが、ようやく発売されました。

院長
一部の美容クリニックでは並行輸入品を処方していましたね!

 

0.25mgから開始し4週間後に0.5mgへ増量します。

治療を強化する場合は0.5mgを4週以上使用後に1mgまで増量可能です。

 

「オゼンピック®」による体重減少量は、最も大きな体重減少を得られたのはベースラインのBMIが25以上(肥満の定義)の成人です。

糖尿病学会(ADA)年次学術集会で発表されました。

更に、「トルリシティ®」と比較して「オゼンピック®」でより多くの患者が5%以上および10%以上の体重減少を達成したと報告があります。

薬価はオゼンピック®皮下注0.25mg SDが1キットあたり1,547円、オゼンピック®皮下注0.5mg SDが1キットあたり3,094円、オゼンピック®皮下注1.0mg SDが1キットあたり6,188円となっています。

最近はオゼンピック®皮下注2mgが発売されています。

オゼンピックSDの製造と輸出一時停止による出荷停止にともなうためです。

これは使い切り製剤ではなく、注射針をインスリンの様に取り換えて使います。一回0.25㎎なら8回分、0.5㎎なら4回分、1.0㎎では2回分注射ができます。薬価は11,088円です。

 

7.セマグルチド(リベルサス®):経口薬

GLP-1製剤の経口薬(セマグルチド)が2021年2月5日に発売開始となりました。

これは毎朝空腹時に服用するお薬です。

先ほど説明したオゼンピック®が内服薬となったものです。

水120ml以下と内服して服用後最低30分間は食事が摂れないため、朝が忙しい人には向いていないかもしれませんね。

なお、服用後食事まで2時間開けると更に効果があるとのことですが、その場合毎朝起床後2時間絶食しないといけません。

またリベルサス内服と同時に他の薬剤は内服できません。

院長
院長
同じセマグルチドのオゼンピックと比較した場合に、内服は吸収にムラが出るため、しっかり効果を出したいのであれば注射のほうがいいでしょう。内服はあくまで注射が嫌な人への代替手段です。

 

リベルサスは3㎎、7㎎、14㎎の3種類の剤形があります。

糖尿病治療では3㎎より開始し、4週間以上経過したら7㎎へ増量します。

7㎎で効果不十分な場合は14㎎へ増量します。

院長
14㎎1錠の代わりに7㎎2錠を服用すると、リベルサスの本来の効果が発揮できない可能性があります。

14㎎まで増量時は14㎎錠を使用します。

 

GLP-1ダイエット注射の効果

GLP-1注射を打てば、皆が必ず痩せるわけではありません。

製剤によって効きが良い人、悪い人もいます。

院長
例えば、トルリシティでは痩せなかったが、ビデュリオンに変えたら痩せたとかです。

 

また、ビクトーザの場合は容量依存的に食欲抑制を生じるため、標準量の0.9mgでは効かないが、最大容量の1.8mgだと食欲が低下し痩せたという方もいます。

院長
GLP-1注射の効果があった人は「1か月で2~3Kg減った」と言われます。

 

GLP-1ダイエットで痩せやすい人と痩せにくい人の特徴

GLP-1ダイエットは、体内にあるGLP-1の濃度によって効果の効き目に差が出ます。

  • 大食いで太りやすい体質:GLP-1濃度が低い⇒ダイエット効果を得やすい
  • 少食で太りにくい体質:GLP-1濃度は正常⇒ダイエット効果を得にくい

大食いの人はGLP-1の血中濃度が低いため、食欲が満たされにくいです。

ホルモンを増やせば食欲抑制の働きが強まるので、減量が期待できます。

 

対して元々食が細い人はGLP-1の分泌量が正常なので、肥満の原因は食欲以外にあります。

代謝が低い可能性があるため、まずはウォーキングなどで消費カロリーを増やし、筋トレで基礎代謝量を増やすようにしましょう。

また、当院では代謝が悪い方に向けて漢方薬を使用した治療も行っています。

 

GLP-1受容体作動薬の使い分け

5種類あると、それぞれ使い勝手や、血糖の下がり方が異なります。

いずれも自己注射ですが、バイエッタ®、リキスミア®、ビクトーザ®、オゼンピック®はインスリンと同じように注射針を1回ごとに取り替えます。

ビデュリオン®、トルリシティ®、オゼンピックSD®は針付きの一体型キットになっており、使いきりとなります。

 

効き方からの使い分けポイントはバイエッタ®、リキスミア®の短時間作用型製剤は、空腹時血糖は少し下げる程度ですが、食後血糖の抑制は強力です。

胃排出遅延作用が強めな分、胃部不快感などが出やすいが、体重減少効果は高いです。

ビクトーザ®、トルリシティ®のような長時間作用型製剤は、胃排出遅延作用が弱いため、消化器症状の発現は少ないです。

空腹時血糖低下は強力ですが、食後血糖抑制作用は弱く、体重減少作用はあまり期待できません。

 

ビデュリオン®はバイエッタ®の改良型のため、短時間作用型と長時間作用型の良いところを合わせた製剤ですが、皮膚の硬結は必発ですし、食欲も1日中なくなってしまいます。

 

それぞれ長所と短所があります。

前者後者共にこれらの違いを考えて併用薬を決めるのが、血糖コントロールや体重減少を得る上での近道だと言えます。

2型糖尿病でも、インスリン枯渇状態にある症例でのインスリンからGLP-1受容体作動薬への変更は、ケトアシドーシスを引き起こす危険があるため十分な注意が必要です。

 

GLP-1ダイエットについて

美容クリニックで最近GLP-1ダイエットを掲げているところが増えていますが、どのGLP-1製剤を使っているかはホームページでは分からないところが殆どです。

院長
インスタグラムで「#GLP1ダイエット」を見ると「ビクトーザ®」か「トルリシティ®」を使っている所が多いように思われます。最近は内服薬の「リベルサス®」も増えてます。

 

GLP-1製剤は効果がありますが、消化器症状が少ないはずの週1回製剤でも消化器症状で止めてしまう人もいます。

GLP-1ダイエットをしたいならGLP-1製剤についてよく知っている先生のもとで処方してもらう方がよいと思います。

GLP-1ダイエット外来でお伝えする内容はこちら⇒GLP-1ダイエットで痩せるために。正しく効果を出すための注意点

当院ではGLP-1注射を打ちたいが「自分で注射を打つのは怖い」という方には、週1回製剤を使用して通院が必要となりますが、外来にて医師又は看護師により週1回注射することも行っています

院長
使用済みの注射器は家庭で不燃ごみとして捨てられません。

必ず処方した医療機関に持参し、医療廃棄物として処分が必要です。

 

費用の目安

ビデュリオン又はトルリシティの場合、週1回注射で1本11,000円(税込み)です。

経口薬のリベルサス錠は、

リベルサス3mg(30日間)11,000円(税込)
リベルサス7mg(30日間)22,000円(税込)
リベルサス14mg(30日間)33,000円(税込)

リベルサスに関しては2回め以降はオンライン診療でも処方しています。

レターパックにて送りますので、送料として1回370円が追加で必要です。

※注射製剤に関しては輸送中の製品変化のリスクがあるためオンライン診療では取り扱いません。

 

オゼンピックSDは0.25mgは1本5,500円、0.5mgは1本11,000円、1mgは1本22,000円(いずれも税込み)です。

オゼンピック2.0㎎注は1本33,000円(税込み)です。さらに注射用の針とアルコール綿が必要です。

 

また初回は初診料+血液検査費用にて7,700円(税込み)がかかります。

毎日製剤の場合は使用量により月額費用が変わります。

 

ビクトーザは、1本が標準容量の1回0.9mg+注射前の毎回の空打ちで17回分打てます。

1ヶ月の目安としてビクトーザ2本(42,000円)+注射用の針(28本で2,000円)+アルコール綿(1月分1,000円)で45,000円(税込)となります。

但し、ビクトーザの投与量が増えるとその分費用がかかります。

(※現在、1回1.8mgまで投与が認められています。)

院長
オンライン診療でGLP-1注射のお問い合わせが多いですが、初回のみは正しく注射手技を覚えてもらうため来院が必要です

他院で使用経験があっても、違う注射へ変更の場合は来院をお願いしています。

 

疑問等があれば下記よりメッセージを送ってください。

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