【医師が解説】高血圧を放置するとどうなるか
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こんにちは!
三重県松阪市の医療と介護の専門家、
西井医院の院長( @nishii.hospital)です。
健診やお医者さんなどで血圧が高いと指摘されたことがある方はたくさんいるかと思います。
今回は高血圧を放置しておくとどうなるかについて解説します。
高血圧は何が問題となるのでしょうか?
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高血圧を放置すると生じること
血圧が高い状態が続くと血管や心臓に負担がかかり、自覚症状がなくても動脈硬化や心臓肥大が進みます。
放置すると心臓や血管、さらに他の臓器にも障害をきたします。
心臓の肥大(左室肥大)・たんぱく尿・脳卒中・心不全・冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)・腎不全・大動脈瘤・動脈閉塞症など、多くの循環器疾患が起こります。
下図は少し古い調査ですが『NIPPON DATA 80』という全国的な研究の結果です。
血圧が高いほど循環器疾患による死亡率が高くなり、高齢者でも同様であることが分かります。
高血圧とはどのような状態か
高血圧は、その名の通り血圧が高い状態です。
これでは答えにならないので具体的に挙げると
高血圧とは
- 血圧が高い状態
- 大部分は遺伝と環境(生活習慣)が関係する
- 一部は腎臓や副腎の病気、薬剤などによる
- 診断基準は 140/90mmHg 以上
- 家庭血圧では 135/85mmHg 以上は高血圧
- 有病率が高い(成人の1/3、高齢者の2/3)
- 動脈硬化や心臓肥大をもたらす(自覚症がなくても)
- 多くの循環器疾患の原因になる(脳卒中、心筋梗塞、心不全、不整脈、動脈瘤、腎不全など)
- 治療により循環器疾患をかなり予防できる
高血圧の基準値と降圧目標値
血圧の基準値はガイドラインで定められています。
ただし、ガイドラインも数年毎に改定され、高血圧の基準値と降圧目標値が変わっています。
日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン(JSH)2019による高血圧の基準
一番最新のガイドラインとなる日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン(JSH)2019の素案では
- 高血圧の基準と降圧薬の開始基準については従来の140/90mmHg以上とする一方、降圧目標は75歳未満の患者は原則、130/80mmHg未満に引下げる。
- 130~139/80~89 mmHgの未治療患者には生活習慣改善を強化する。
- 75歳以上の患者の降圧目標も引下げ、140/90mmHg未満とする。
収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上の人では、薬で血圧を下げる降圧治療によって合併症や死亡率が下がることもわかっています。
これは高齢者でも同じです。
よって、「140/90mmHg以上」を高血圧にしています。
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高血圧の原因
血圧の上昇の原因が明らかな場合を「二次性高血圧」と呼びます。
しかし、これは高血圧全体の10%未満に過ぎません。
高血圧の大部分は本態性高血圧
原因が特定できない「本態性高血圧」が高血圧の大部分を占めています。
本態性高血圧は遺伝因子と環境因子が複雑にからみ合って発症し、高血圧が続きます。
環境因子として大切なのは、食塩、アルコール、肥満、運動不足
両親などが高血圧で、遺伝的に高血圧になりやすい体質の人でもあきらめてはいけません。
塩分の制限、節酒、肥満の改善、適度の運動など、環境条件を改善すれば、高血圧の発症を防いだり、発症を遅らせたり、上がった血圧を下げたりすることができます。
YouTube動画でも解説しています。
高血圧についてよくある質問
下の血圧が高いですが大丈夫?
これは年齢により答えが変わります。
通常は「上の血圧も下の血圧も低い」が望ましいです。
血圧は一般に年齢とともに高くなります。
ただし、上の血圧は上昇を続けるのに対し、下の血圧は高齢になるとむしろ下がってきます。
これは動脈が硬くなり伸び縮みしなくなったために生じます。
ですので、高齢者で下の血圧が高いのは血管が軟らかい証拠です。
高齢者に限っては「上の血圧は低く、下の血圧は高い」が望ましい状態です。
いつまで薬を飲み続けないといけませんか?
答えは「血圧の高値が続けば薬を飲むべき」です。
薬による循環器疾患の予防効果は明らかです。
死亡率の低下や認知症の予防も期待できます。
しかし、白衣の医療者の前(診察室)では高いが、家庭では低い「白衣高血圧」の人は、通常は薬は不要でしょう。
血圧が下がったら薬を止められますか?
答えは「原則はずっと継続」です。
高血圧はコントロールできますが、自然に治りません。
ただし、心臓や腎臓が悪くない人で、少量の薬で血圧が低い場合や、生活習慣の修正が十分にできれば、やめることができるかもしれません。
血圧の薬を増やすと怖くありませんか?
答えは「あまり怖くない」です。
降圧薬に、命取りになるような副作用はほとんどありません。
小さな副作用は起こるかもしれませんが、薬を中止すればよくなります。
降圧治療の効果を考えれば、薬を飲まないことの方がもっと怖いです。
ただし、薬が始まったり、変わったりした後に体調が悪くなった場合には、早めに主治医に相談しましょう。
血圧はいつ測るのがいいですか?
家庭血圧は、朝(起床後朝食前)と夜(就寝前)に測定することが推奨されています。
1回でもいいですが、2、3回繰り返し測る方がよいでしょう。
血圧は、毎日測って記録することが望ましいです。
しかし時々でも結構ですから、まず測ることが大事です。
また、めまいや頭痛などの症状が起こったときにも測定しておくと血圧が原因かどうか調べるのに役立ちます。
どんなものを食べると良いですか?
野菜や果物は、カリウムやマグネシウムを多く含み、血圧を下げる効果があります。
食物線維も血圧やコレステロールを下げます。
カルシウムも血圧にはよく、低脂肪乳製品の摂取が勧められています。
ただし、腎臓が悪い方は、野菜や果物は血清カリウムを上げますので要注意です。
控えた方がよい食べ物はありますか?
特に控えるべき食品はありません。
あえて言うならば塩分を控えることが大切です。
塩分の目標は1日6g未満です。
日本人の食塩摂取量は1日約11gと多く、このことをしっかり踏まえて減らす必要があります。
血圧への効果は個人差がありますが、1g減らせば1mmHg程度下がります。
方法は塩や醤油の使用を減らすこと、外食や加工食品に注意することなどです。
高血圧は遺伝によるものだから仕方がない?
遺伝子が同じ一卵性双生児について高血圧を調べた研究結果から、発症には、遺伝因子が60%、環境因子が40%からんでいることがわかってきました。
環境因子が40%もあるので、生活習慣を変えることには意味があります。
あきらめずに、生活習慣の改善をしましょう。
家での血圧を測るのは面倒なんですが…
家庭血圧の測定は下表のように多くの利点があり、なるべく測定してください。
血圧は、毎日測って記録することが望ましいのですが、時々でも結構ですから、まず測ることが大事です。
また、めまいなどの症状が起こったときにも測定してください。
血圧の数値に一喜一憂することはありません。家庭血圧を測定することによって、よりよい高血圧の管理ができると考え、実行してください。
家庭血圧測定のメリット
- 日常生活における血圧が分かる
- 測定回数が多く、信頼性や再現性が高い
- 高血圧による心臓や血管の障害に強く関連する
- 白衣効果や偽薬効果がない
- 薬物治療や生活習慣修正の効果判定に優れる
- 自覚症状と血圧との関係が分かる
- 高血圧治療への意識の高まりが期待できる
まとめ
- 高血圧を放置すると多くの循環器疾患の原因になる
- 高血圧には自覚症状がない
- 生活習慣の改善と薬の継続服用が大切
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