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【医師が解説】災害による長期避難と栄養不足の問題について

 
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1974年生まれ。2000年三重大学医学部卒業。三重県松阪市で内科クリニックを10年前からしています。診療所に併設して有料老人ホーム、認知症対応型グループホームもあり、自宅生活の方も含め在宅医療も行っています。 また、インスタグラムでフォロワー1万人超のアカウントを2つ運営するインスタグラマーでもあります。 地域のかかりつけ医として気軽になんでも相談してください。医療と介護の両面から一緒に考えます。
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こんにちは!

三重県松阪市の医療と介護の専門家、

西井医院の院長(  @nishii.hospital)です。

 

今年は台風15号では長期間の停電、台風19号では広大な範囲での水害と災害が多いです。

院長
今回の台風で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

 

もともと日本は地震や台風が多い国ですので、普段から避難への備えをしましょうとは様々な所で耳にすると思います。

避難することは大切ですが、避難所生活が長期化すると様々な問題が出てきます。

今回は避難所生活が続いた際の栄養問題についてです。

 

災害後の食の問題

災害時には多くの方が生活する避難所では、調理施設や食材が限られていることから食事に関する様々な問題が生じます。

東日本大震災で被災された方々に調査したところ、下記のような問題がありました。

  • 野菜の量が少ない。
  • 肉、魚、卵、牛乳などのタンパク質源が少ない。
  • おにぎりや菓子パンなど、穀類の量が多い。
  • 菓子が豊富でいつでも際限なく食べられる避難所があった。
  • 食材があっても調理法がわからず調理できない避難所があった。

また、ライフラインが止まることで冷えて硬くなった食事が多く、高齢者や小児では食事量が減ってしまうという問題もあります。

 

避難所での食生活の問題

栄養

配給される食事は、おにぎり、パン、菓子類などの炭水化物(糖質)が主体です。

肉、魚、卵、乳製品、野菜、果物などの生鮮食品はどうしても不足しがちになります。

そのため、タンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維の不足が生じやすくなります。

院長
2~3日なら炭水化物主体でも仕方ないですが、長期化するとつらいですね!

 

水分

避難所では

  • 飲料水の配給が限られている。
  • トイレの数が限られている。
  • 非常食など水分量の少ない食事が多い。

といった理由により水分摂取量が減少することが懸念されます。

 

水分摂取が少ないと

  • 脱水症
  • エコノミー症候群
  • 熱中症(冬なら低体温症)
  • 慢性疾患の悪化

などが生じやすくなります。

 

衛生面

被災地自体が衛生環境が悪く、洗浄や殺菌のための資材が少なく不十分となりやすいです。

また、調理する方もボランティアスタッフなど普段大量調理を行わない人がしがちです。

被災者も避難所生活での疲労やストレスで免疫力が低下しがちです。

以上のような理由で食中毒が発生しやすくなります

 

ストレスと食欲の関係

災害への恐怖や避難所生活でのストレスは食欲と大いに関係があります。

一般的にストレスは急性期には食欲を低下させる方向へ働きます。

院長
急性期にはノルアドレナリンが分泌されるためです。

 

避難生活が長期化すると今度はストレスは食欲亢進する方向へ作用します。

特に食欲が増加した際には、甘い物、脂肪分やエネルギー密度が高い食品が摂取される傾向にあり、避難所にもある食事もそういった物が多いため糖尿病などが悪化しがちです。

院長
コルチゾールが分泌されると食欲増進します。

ストレスが続くとドカ食いしてしまうことはありませんか?

 

災害時に不足しがちなビタミンやミネラル

先ほども「タンパク質やビタミン、ミネラル、食物繊維の不足が生じやすくなります。」と書きましたが、具体的に不足しがちなものを挙げてみます。

 

ビタミンA

体内貯蔵期間は約120日です。

ビタミン Aが不足すると感染症に罹りやすくなってきます。

 

ビタミンB1

体内貯蔵期間は約30日です。

ブドウ糖をエネルギーに変換する際に必要な栄養素です。

院長
被災後1か月程度で不足してしまいます!

 

過労などの神経興奮により消費量が増加することも報告されています。

 

ビタミンB2

ビタミンB1と同様に体内貯蔵期間は約30日です。

脂質・糖質・タンパク質が分解されエネルギーにかわる際にサポートする栄養素です。

また、成長促進にも欠かせないため、「発育ビタミン」ともよばれます。

 

ビタミンB2はエネルギー消費量が多いほど必要量が増える傾向にあります。

ビタミンB2が不足すると肌荒れや口内炎が起きるなど皮膚や粘膜に影響が現れます

 

ビタミンB6

ストレス時に分泌されるノルアドレナリン、アドレナリン、セロトニンなどが作られる時に補酵素として働きます。

災害時はストレスが多くなるため不足が懸念されます。

不足すると、

  • 身体がだるくなる
  • 疲れやすくなる
  • 湿疹や皮膚炎になる
  • 口内炎、舌炎になる
  • イライラしたり気持ちが不安定になる
  • 血が起こる

といった症状が出ます。

 

ビタミンC

体内貯蔵期間は約40日です。

炭水化物主体の食事ではビタミンCは摂れません。

また、身体的・精神的ストレスがかかると消耗はさらに早まります。

ビタミンCが不足すると、コラーゲンが合成されないために、血管がもろくなり出血を起こします。

院長
16世紀から18世紀にかけての大航海時代の船員に流行した壊血病ですね!

 

カルシウム

体内貯蔵期間は約6ヶ月です。

ただし、日本人のカルシウム摂取量は通常時でも全ての年齢層で不足傾向です。

カルシウムを多く含むのは乳製品、小魚、大豆、緑黄色野菜などです

しかし災害時これらの食品は配給されにくいため、さらに不足しがちです。

 

体内貯蔵期間は約120日です。

通常時でも成長期の子供や女性は摂取量が不足しがちです。

鉄欠乏性貧血が有名ですが、鉄不足によって貧血による疲労感やだるさを感じやすくなります。

 

まとめ

  • 普段から過不足なく栄養を摂ることを心がける。
  • マルチビタミン・ミネラルなどのサプリメントの利用も含めた「災害用栄養備蓄」も検討する。

 

院長
西井医院では医療機関専売サプリを使用したサプリメント外来も行っています。

 

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