花粉症は鼻と眼だけじゃない② 花粉と気管支喘息の関係
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前回は花粉症皮膚炎について書きました。
今回は花粉症と喘息の関係です。
この時期になると熱の無い風邪症状、特に咳が続くという人がいます。
喉の痛みというより違和感(イガイガとした感じ)を同時に訴えることが多いです。
花粉症の時期の呼吸器症状に注意
花粉症自体も咳がでることがあるため分かりにくいですが、少しでもヒューヒュー、ゼイゼイという喘鳴(ぜんめい)や息苦しさがあれば、喘息だと思われます。
花粉症の季節に喘息が悪くなる人は多い
喘息は過敏になっている気道が刺激されて起こる
喘息の症状は、炎症によって過敏になっている気道に刺激が加わると起こります。
気道は肺の奥深くに行くにつれて狭くなっていきます。
粒子が小さい(5μm以下)ダニの死骸が混ざったホコリや黄砂などは、気道の細いところ(気管支)まで入っていき、気道を刺激します。
花粉自体は直接気道へ届きません
スギ花粉は、粒子が30~35μmという大きさです。
花粉の多くは鼻や目の粘膜にくっついて、気管支にまで入ってこれません。
このため、花粉自体が直接気道を刺激して喘息症状を引き起こすわけではありません。
one way, one disease
これは「鼻と気管支は、空気の通り道として1つにつながっているので花粉症も喘息も一つの病態として考える」という意味です。
花粉が鼻の粘膜を刺激すると、炎症が起こり鼻炎が起こります。
その刺激や炎症が気道へと伝わり、結果的に喘息の症状が悪化します。
よって花粉症の症状が重い人は喘息の症状も重くなったりします。
アレルギー性鼻炎と喘息の合併、両方とも発症している人は多い
最近の調査では、アレルギー性鼻炎の患者さんを調べると、2~3割程度に喘息を合併している人がいます。
喘息の有病率というのはだいたい3~5%ぐらいといわれています。
それと比べると非常に高いです。
一方、喘息の患者さんから検討してみると、年齢や調査法によってだいぶ異なりますが、8割以上、低くても4~5割ぐらいの方がアレルギー性鼻炎を合併しています。
よって非常に喘息とアレルギー性鼻炎は合併率が高いということが改めて明らかになっています。
喘息とアレルギー性鼻炎は病状、経過にも密接な関係がある
喘息とアレルギー性鼻炎合併することが多いだけではありません。
両方を合併している人は鼻炎が悪化するときには両方とも悪くなることが多いです。
さらに、鼻炎の治療をすると合併している喘息も改善することが多い、逆に喘息の治療をすると鼻炎も改善することが多いといったことが明らかになっています。
花粉曝露予防が一番大事
喘息を悪化させないためには花粉に曝露しないことが一番大事です。
- マスクの着用、洗濯物は室内干しなどの予防が効果的です。
- 風の強い日には眼の症状が強くなるので、眼鏡の装用も効果的です。
- 花粉のつきにくいスベスベした衣類を着る。
- 帰宅したら家に入る前に服をはたいて花粉を落とす。
- 室内では空気清浄機を利用する。(フィルターの掃除も定期的にしましょう。)
花粉による喘息症状を悪化させないために
でも実際には全く花粉に曝露しないということは無理です。
そこで普段からの喘息治療が大事です。
普段から喘息治療が上手くいっている人は症状が悪化しにくいです。
症状がなく安定していても、喘息患者さんの気道は喘息ではない人に比べて過敏です。
喘息は気道の炎症が原因の病気なので、治療をしてしっかり炎症を抑えていれば気道の過敏性もおさえられます。
こういう状態になっていれば、花粉が飛んでも喘息の症状は起こりにくくなります。
症状が無いのに、風邪をひくと喘息症状が出る、春や秋の季節の変わり目になると喘息症状が出るというのは実は炎症がしっかり抑えられていません。
喘息の治療には吸入ステロイド薬
喘息の本態は気道の炎症です。
炎症を抑えるにはステロイドが必要です。
ステロイドとはステロイドとは、副腎(両方の腎臓の上端にあります)から作られる副腎皮質ホルモンの1つです。
ステロイドホルモンを薬として使用すると、体の中の炎症を抑えたり、体の免疫力を抑制したりする作用があり、さまざまな疾患の治療に使われています。
副作用も多いため、注意が必要な薬です。
ステロイドと聞くとなんだか怖いものと思って使用をためらう方がいます。
しかし喘息で使用するステロイドは吸入薬です。
気道に直接薬を届けるので、内服や注射に比べると、ごくわずかな量(約100分の1)のステロイドしか必要としません。
また、吸入ステロイド薬は内服ステロイド薬にみられる全身性の副作用がほとんどないことがわかっています。
喘息症状がおさまっても吸入薬は続ける
喘息症状がおさまると「喘息が治った」と思って来院しなくなったり、吸入を止めてしまう人が結構います。
先ほども書きましたが、喘息は気道の炎症が原因の病気です。
治療を開始すれば気道の過敏性も低下して、症状も和らぎます。
このため、「治った」と思ってしまいやすいです。
しかし、喘息も高血圧や糖尿病と同じ慢性の病気です。
症状が無くても治療は続けておくことが、花粉が飛び出すといった刺激があっても症状を悪化させないことにつながります。
花粉症の症状に呼吸器症状があるときは
耳鼻科だけでなく、呼吸器科やアレルギー科、内科でも治療を受けましょう。
吸入ステロイド薬は正しく吸わないと効果を発揮しません。
処方時にきちんと吸入の仕方を教えてくれる先生や薬局を選ぶことが意外な重要ポイントです。
まとめ
- 花粉症の季節に喘息が悪くなる人は多い。
- 鼻と気管支は、空気の通り道として1つにつながっているので両方の症状は密接な関係がある。
- 吸入ステロイド薬は全身への副作用はほとんどなく、喘息治療には欠かせない。
- 喘息の治療は症状が無くても続けることが必要。
- 吸入指導をちゃんとしてくれる医師や薬剤師さんがいることが実は大切。
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