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【睡眠障害】これは不眠症? 眠りのトラブルと治療について

 
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1974年生まれ。2000年三重大学医学部卒業。三重県松阪市で内科クリニックを10年前からしています。診療所に併設して有料老人ホーム、認知症対応型グループホームもあり、自宅生活の方も含め在宅医療も行っています。 また、インスタグラムでフォロワー1万人超のアカウントを2つ運営するインスタグラマーでもあります。 地域のかかりつけ医として気軽になんでも相談してください。医療と介護の両面から一緒に考えます。
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こんにちは!

三重県松阪市の医療と介護の専門家、

西井医院の院長(  @nishii.hospital)です。

 

患者さんの「眠れません」の訴えには様々な原因があります。

眠れないからといって眠剤を出せば終わりではありません。

いわゆる「不眠症」以外にも眠りの質を下げる原因が色々あります。

今回は不眠症以外で眠りの質を下げる疾患を解説します。

 

 

睡眠障害とは

睡眠障害は、睡眠の問題がもとで、仕事や勉強がうまくいかなかったり、イライラしたりと、普段の暮らしの中で様々なトラブルが生じる状態です。

睡眠障害は大きく分けて3つに分けられます。

  1. 不眠症など睡眠の質が低下する病気
  2. 日中に眠気が出る病気
  3. 夢遊病など睡眠中に異常が出る病気

です。

 

さまざまな症状を呈する睡眠障害を鑑別するのは実は難しいです。

今回は厚生労働省の研究班の診断フローチャートを元によくみられる睡眠障害と疑われる病気について解説です。

 

 

睡眠障害の特徴と治療

うつ病が原因の不眠・過眠

色々なことに興味や意欲がなくなったり、食欲が低下している場合は、まず「うつ病」を疑います。

実は慢性不眠のある患者さんの約2割はうつ病にかかっているといわれています。

逆にうつ病の患者さんの約8割に不眠が、約1割に過眠(日中の眠気や長時間睡眠)がみられます。

 

うつ状態が強いと、抗うつ薬が処方されますが、薬によっては眠る効果が弱いため、最初は睡眠薬を併用せざるを得ないこともよくあります。

うつ病が改善し、眠れるようになれば睡眠薬は減らしていくこともできます。

 

睡眠時無呼吸症候群

仰向けに眠っている間に、舌がのどの奥に落ち込んで激しいいびきをかいたり、気道が完全に閉じて血中の酸素が低下し、目が覚めて呼吸が回復することを繰り返します。

睡眠がたびたび中断されるため、夜の不眠だけでなく、日中も眠くなります。

よくある患者像は下あごが小さく、首が短く、太っている場合が多いです。

男性や高齢者に多く見られます。

放置しておくと高血圧などの心血管疾患や眠気による事故の原因となります。

院長
当院では睡眠時無呼吸症候群の簡易検査と治療を行っています。

治療は、寝ている間に呼吸装置(CPAP)を顔につけたり、マウスピースで下あごを固定する方法などがあります。

眠れないからといって安易にベンゾジアゼピン系睡眠薬を使うと無呼吸が悪化することがあるため、使用は避けます。

 

 

むずむず脚

睡眠関連運動障害で多いのは、レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)です。

脳内のドーパミンと呼ばれる神経伝達物質と鉄のアンバランスが原因で起こる場合や、重度の腎不全(主に透析患者)、妊娠、慢性関節リウマチ、神経疾患(末梢神経障害・脊髄障害、パーキンソン病)、薬物(抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、抗精神病薬、リチウムなど)、カフェインの摂り過ぎなどで生じることもあります。

 

診断は次の4つの特徴が全てそろえば、診断されます。

  1. 腕や脚をどうしても動かしたくなる
  2. ムズムズしたり、電気が走ったような痛みなどの脚の異常感覚
  3. 腕や脚を動かすことで症状が軽減
  4. 夕方~夜間に出現もしくは悪化する

 

多くの場合、膝より下(スネや足先や足裏)に生じますが、まれに腕や腹部に生じることもあります。

発症のピークは中高年です。

 

治療には「ドパミン受容体作動薬」が第一選択薬です。

院長
ドパミン受容体作動薬の貼付剤も最近はあります。

そのほか、「電位依存性カルシウムチャネル作動薬」やベンゾジアゼピン系薬も使います。

 

生活改善も有効な治療法です。

カフェイン、ニコチン、アルコールは症状を悪化させるので避けましょう。

入浴、歩行、運動をすることは効果的です。

ストレッチ、下肢マッサージ、指圧、湿布(温・冷)カイロなどで改善することもあります。

 

もう一つのが、夜、手足の筋肉がピクつく動きが繰り返し起こり、不眠や日中の眠気の原因となる「周期性四肢運動障害」です。

レストレスレッグス症候群に合併することも多く、殆どが脚に生じます。

足首が甲の方向に反り、拇指が反ったり、膝関節やときには股関節が曲がる症状を繰り返します。

確定診断には、一晩入院して、睡眠中の脳波や呼吸、心電図などを記録する「睡眠ポリグラフ検査」が必要です。

加齢とともに増加し、65歳以上の高齢者では30%以上に見られますが、症状を自覚していない患者さんも多いです。

治療はレストレスレッグス症候群と同じです。

 

過眠症

「過眠」とは、夜間十分に眠っているにもかかわらず、日中にひどい眠気が生じ、居眠りを繰り返す症状です。

「ナルコレプシー」「特発性過眠症」などが代表的です。

起きている状態を続けるための脳の機能に何らかの異常があるために発症します。

診断には、「睡眠ポリグラフ検査」と、日中の眠気を調べる「反復睡眠潜時検査」が必要です。

また、睡眠日誌や腕時計型のセンサーで、実生活のでの睡眠習慣を記録します。

 

ナルコレプシーの日中の居眠りは通常20分程度で自然に目覚め、リフレッシュした気分になることもありますが、しばらくするとまた強い眠気におそわれ居眠りを繰り返します。

代表的な症状として「情動脱力発作(じょうどうだつりょくほっさ)」があり、笑ったり怒ったりしたときに、突然、体の力が抜けて、首が垂れ下がってしまったり、倒れこんでしまったりします。

程度は様々ですが、通常は数秒から数十秒で自然に回復します(2分未満です)。

ナルコレプシーは脳を覚醒させる神経伝達物質であるオレキシンが枯渇することが原因であることが分かっています。

 

一方特発性過眠症では、やはり日中のひどい眠気はありますが、情動脱力発作がなく、オレキシン濃度も正常です。

 

ナルコレプシーの眠気には、まずモダフィニル(モディオダール®)の処方を検討します。

ほかに、半減期・実行時間とも短めのメチルフェニデート(リタリン®)、覚醒効果がやや弱いぺモリン(ベタナミン®)があります。

院長
リタリン®は乱用が問題となり、現在は流通が厳格に管理されており、登録された病院、薬局でしか処方、薬の引き渡しができません。

 

情動脱力発作や入眠時幻覚、睡眠麻痺(金縛り)はレム睡眠に関連した症状で、これらに対してはレム睡眠を抑制する作用のある抗うつ薬を用います。

 

夢遊病や悪夢、寝言

眠る直前や、眠っている間に異常行動が多いのが「睡眠時随伴症」です。

子供に多いのは、睡眠時遊行症(いわゆる夢遊病)や睡眠時驚愕症(夜驚症)が挙げられます。

これらは、眠りが深いノンレム睡眠から起こり、通常、夢見体験を伴うことはなく、目を覚ませせるのが困難です。

小児期(5~12歳)に始まり、青年期までには大部分が自然に治ります。

睡眠時遊行症では、患者さんが眠ったまま起き上がり、歩き回ったりします。

睡眠時驚愕症では、やはり眠ったまま、悲鳴や叫び声を上げたり、汗や過呼吸など自律神経症状が出たりします。

 

一方、中年期から老年期に最も多いのは、「レム睡眠行動障害」です。

通常、レム睡眠中は筋肉の動きが抑えられますが、この機能が働かず、夢の中でしているのと同じ大声の寝言や、体を大きく動かす症状が出ます。

せん妄と異なり、症状が出た時に起こすとすぐに目を覚ますことができます。

パーキンソン病やレビー小体型認知症で多く見られ、その前触れとなることも少なくありません。

 

レム睡眠行動障害では、まずクロナゼパム(リボトリール®)の処方が検討されます。

効果がない場合や副作用で使用が難しい時はプラミペキソール(ビ・シフロール®)を検討します。

その他としては、三環系抗うつ薬(クロミプラミンなど)、カルバマゼピン、抑肝散などを使います。

 

変な時間に眠る

出社や登校など社会生活を送るのに好ましい時間に眠ることができず、昼夜サイクルから睡眠時間帯が大きくずれ込んでしまうのが、「概日リズム睡眠ー覚醒障害」です。

睡眠そのものには問題なく。一旦寝ついてしまえばよく眠れ、むしろ長時間睡眠のケースが多いです。

自然に眠くなる時間に合わせて自由に眠ることができる場合には大きな問題は生じません。

しかし、多くの場合はには出勤や登校などの時間が決まっており、結果的に起きられない、眠れない、日中の強い眠気などの不眠・過眠症状が出現します。

 

睡眠時間帯の異常は、患者さん自身がもつ生物時計(体内時計)の機能異常のために出現する場合と、時差ボケや交代勤務のように、無理に睡眠時間帯をずらした結果として生じる場合があります。

いくつかのパターンがありますが、最も多いのは睡眠時間帯が大きく遅れてしまう「睡眠ー覚醒相後退障害」です。

典型的な患者さんでは、午前3~5時以降でないと眠れず、午前9~11時以降にようやく目が覚めます。

重症でない場合は眠りにつくことが難しいタイプの不眠症と誤診されることがあります。

無理に生活スケジュールを合わせようとすると慢性的な短時間睡眠になり、日中に眠気が残ると過眠症のようにみえることがあります。

 

治療では、体内時計の調節のため、高照度光療法やメラトニン、メラトニン受容体作動薬、ビタミンB12などを用います。

いずれの治療も特殊な知識や技法が必要なので、軽症の場合を除いて睡眠障害専門施設へ紹介することになります。

軽症の場合は、目覚まし複数かけるなどして決まった時間に起床し、午前中にできるだけ強い光(日光)を浴びる、休日も含めて食事や寝る時間を一定にするなど、生活習慣を整えるようにします。

気分障害の合併率が高く、抗うつ剤などによる治療を併用する必要があることも少なくありません。

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最後に

不眠症以外にも睡眠障害の原因は様々です。

単に眠剤を処方すればよいというものではないということが分かっていただけたでしょうか?

当院では、

  • 睡眠時無呼吸症候群の簡易検査及びCPAP治療
  • レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)の治療
  • (併設の精神科で)うつ病の治療

は行っています。

 

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1974年生まれ。2000年三重大学医学部卒業。三重県松阪市で内科クリニックを10年前からしています。診療所に併設して有料老人ホーム、認知症対応型グループホームもあり、自宅生活の方も含め在宅医療も行っています。 また、インスタグラムでフォロワー1万人超のアカウントを2つ運営するインスタグラマーでもあります。 地域のかかりつけ医として気軽になんでも相談してください。医療と介護の両面から一緒に考えます。
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