三重県松阪市の医療と介護の専門家 

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歯周病予防は生活習慣病予防と一体です。医師と歯科医のコラボで対策。

 
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1974年生まれ。2000年三重大学医学部卒業。三重県松阪市で内科クリニックを10年前からしています。診療所に併設して有料老人ホーム、認知症対応型グループホームもあり、自宅生活の方も含め在宅医療も行っています。 また、インスタグラムでフォロワー1万人超のアカウントを2つ運営するインスタグラマーでもあります。 地域のかかりつけ医として気軽になんでも相談してください。医療と介護の両面から一緒に考えます。
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先日、松阪地区の三師会(医師会・歯科医師会・薬剤師会)の理事の先生方と飲む機会がありました。

そこで話題になったのが歯科疾患である「歯周病」と医科疾患の「生活習慣病」の関係性でした。

 

歯周病とはどんな病気か?

歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。

歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が行き届かないでいると、そこに多くの細菌が停滞し(歯垢の蓄積)歯肉の辺縁が「炎症」を帯びて赤くなったり、腫れたりします(痛みはほとんどの場合ありません)。

そして、進行すると歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目が深くなり、歯を支える土台(歯槽骨)が溶けて歯が動くようになり、最後は抜歯をしなければいけなくなってしまいます。

歯周病(歯槽膿漏)ってどんな病気

引用:日本臨床歯周病学会HPより

 

歯周病になりやすい生活習慣

・喫煙
・口の中の清掃不良
・初診時のポケットの深さ
・プラークの付着量(プラークとは、細菌の塊で1/1000gの中に1億を超える細菌が棲みついています。)
・ストレス
・口腔清掃教育の達成率
・食生活・専門医への受診回数 など

またプラークの溜まりやすい、歯に合っていない被せ物があることなども含まれます。

口呼吸、すなわち口で呼吸をする習慣のある人も、口の中の粘膜や歯ぐきが乾燥しやすくなり、炎症を起こしやすいです。

院長
歯周病の有病率は、20歳代で約7割、30~50歳代は約8割、60歳代は約9割です。

 

歯周病が引き起こす病気

1、歯周病と心臓病

歯周病と心臓病には深い相関関係があり、歯周病原因菌が心臓の血管をつまらせ、心臓の血管の細胞を障害することがアメリカの研究で明らかになりました。

動脈硬化症や大動脈瘤にかかった細胞を検査すると、多くの歯周病関連菌(Pg菌=Porphyromonas gingivalisなど)が検出されます。

 

2、歯周病と糖尿病

糖尿病患者は、血液が高血糖になり、毛細血管がもろくなります。

そのため、糖尿病でない患者と比較した場合、毎日のお口のケアを怠ると、歯肉炎を起こしやすくなります。

そのまま放置すると重度の歯周病になりやすいと報告されています。

 

3、歯周病と肺炎

厚生労働省より、高齢者(65歳以上)の死亡原因、第1位は肺炎と報告されています。

肺炎の中でも、口の中の細菌が肺に入り込み炎症を起こす肺炎を誤嚥性肺炎や嚥下性肺炎といいます。

高齢になると、食べ物を飲み込むための喉の筋力が低下し、本来食道に入るものが、気管支に入ってしまうことがよくあります。

誤嚥性肺炎を起こした患者さまの肺からは、歯周病原因菌(嫌気性グラム陰性桿菌など)が高い頻度で見つかることから、歯周病と肺炎に強い関連性があるとされています。

 

 

4、歯周病と骨粗鬆症

骨粗鬆症の患者は、そうでない患者と比較した場合、歯を支えている骨の減少(歯槽骨吸収)が早く、歯周病の進行が早いという報告があります。

また、歯周病で歯を失うことにより、食べ物を噛む力が弱まり、バランスよく食事することが難しくなるため、身体全体の骨密度が低下し、悪循環が起こりやすい傾向にあります。

 

5、歯周病と早産

歯周病にかかっている妊婦とそうでない妊婦を比較した場合、歯周病にかかっている妊婦さんは、早産の可能性が高まると報告されています。

歯周病が進行して歯ぐきの炎症が強くなると、歯周組織のプロスタグランディンE2が増えます。

このプロスタグランディンE2は、じん痛促進剤として使用されており、子宮の収縮、子宮頚部の拡張作用を促すため、早産を引き起こすといわれています。

アメリカでは、歯周病と早産の関連性に関する報告が多数あり、早産であった妊婦さんのお口の中を調べてみると、歯周病の重度である割合が高く、多量のプロスタグランディンE2が影響を与えていると見られます。

 

6、歯周病とバージャー病

バージャー病とは、手足の末端の血管が詰まり、炎症がおき、皮膚に痛みや潰瘍をおこす病気です。

このバージャー病と歯周病には深い関連性があり、バージャー病にかかった方は、全員歯周病であると診断され、歯周病の進行度合いは中度から重症でした。

痛み、または潰瘍がある部分の血管から採血し、検査を行った結果、血液からは歯周病菌が検出された一方で、正常な箇所からは歯周病菌が検出されませんでした。

歯周病菌は、血栓をつくりやすく、皮膚の内側の細胞に進入するとの報告がされています。

歯周病菌がお口の中にとどまらず、身体全体に行ってしまい、最悪の場合バージャー病を引き起こすとみられています。

 

歯周病予防のための生活習慣の改善

歯周病の予防・治療は、患者が自分で行うセルフケアと、歯科医師や歯科衛生士による治療のプロフェショナルケアに大きく分けられます。

セルフケアの歯ブラシや歯間ブラシの使い方は個々人の歯並びなどによっても異なる場合があるので、歯科医院を受診して指導してもらうのが一番です。

このブログでは生活習慣の改善による予防法を伝えます。

 

1.禁煙

タバコの煙の中には、タール、一酸化炭素、ニコチンをはじめとして、数多くの有害物質が含まれています。

タールはヤニとして歯に付着し、さらにその上にプラークが付着しやすくなります。

一酸化炭素やニコチンは、病原菌に対する抵抗力を低下させるとともに、歯ぐきの腫れを隠したり、傷口を治りにくくするために、歯周病を重篤化させます。

よって、歯周病の治療に際しては禁煙が必要となります。

 

2.よく噛んで食事を摂る(肥満防止)

早食いは食物を沢山食べる事につながります。

ゆっくりと良くかんで、唾液と食べ物とをしっかりと混ぜながら食事を楽しむことが大切です。

 

3.食生活の見直し(食育)

繊維の多い野菜、ビタミンA、C、D の豊富な食べ物や野菜、果物をとり、栄養のバランスのとれた食事を心がけましょう。

 

4.ストレスの解消

日常生活でのストレス解消のため、ジョギングや軽い運動、アロマ療法、音楽療法などを試みたりして、リラックスすることも大切です。

 

まとめ

・歯周病は様々な生活習慣病と関連があります。

・歯周病の予防・治療にはセルフケアとプロフェッショナルケアの両方が必要。

・生活習慣の改善をすることで歯周病予防に役立ちます。

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